熱帯における森林の孤立化は益々進行しつつあり、泥炭地においても例外ではない。熱帯泥炭地における孤立化した森林の生態学的役割を検討するために、平成27年度はインドネシア・スマトラ島において、①孤立林、②孤立林に近接した荒廃泥炭地、および③孤立林から離れた荒廃泥炭地、の3つのランドスケープにおけるシロアリ相とアリ相の調査を行った。 調査方法は以下の通りである。シロアリ相は、標準法である100 m x 2 m のベルト・トランセクト法を採用し、塚、地面上の枯死木や枯死枝、蟻道、倒木下の土中について決められた時間内での調査を行った。兵蟻と職蟻を採集し、80%エタノールに保存することによってその後の種同定に供した。アリ相については、100 mのライン・トランセクトを設定し、10 m毎に落下トラップを設置して24時間後に回収することによって調査した。シロアリの場合と同様、採集した個体は80%エタノールに保存し、同定に供した。 その結果、シロアリ相については3つのランドスケープ間において種数に関する有意な差は認められなかったものの、2つの荒廃地を比較してみると、シロアリ亜科とテングシロアリ亜科に属するあるグループが孤立林に近接した荒廃地のみで生息していた。アリ相においては、3つのランドスケープ間で種数や種構成に有意な違いは観察されなかったものの、調査地内の種の均一性については孤立林から離れるにしたがって低下した。 これらの結果は、荒廃泥炭地において孤立林の存在というものその地域における生物多様性を担保する一定の役割を有することを示している。
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