研究課題/領域番号 |
14F04093
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
荻 朋男 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 准教授 (80508317)
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研究分担者 |
GUO Chaowan 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ヌクレオチド除去修復機構 / TC-NER / UVSSA / 紫外線高感受性症候群 / RNAポリメラーゼII / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヌクレオチド除去修復機構(nucleotide excision repair: NERのサブパスウェイである、転写と共役したNER(Transcription coupled NER: TC-NER)の損傷認識を含む修復開始反応過程に注目し、その解明を目指している。2012年に研究代表者らが同定した新規TC-NER関連因子であるUVSSAの機能解析を通して、UVSSAが誘導すると考えられる転写型RNAポリメラーゼ(RNA polIIo)の機能修飾的なユビキチン化の詳細なメカニズムを調査することで、DNA損傷後のTC-NERの分子機構を明らかにする事を目指した。 本研究の目的を達成するために、以下の3つの課題に取り組んでいる。1)RNA polIIoのユビキチン化におけるUVSSAの役割及び作用機序の検討。2)UVSSAによって誘導される機能的なユビキチン化修飾と、DNA損傷後のTC-NER進行との関連性の解析。3)プロテオミクス解析によるUVSSAと関連する新規NER調節因子及びE3ライゲースの探索。初年度は、課題1)in vitro再構成ユビキチン化反応系の構築と、課題2)RNA polIIoをリビングセルで経時的に観察するシステムの確立 (蛍光融合したRNA polIIoの安定発現細胞株の樹立、FRAP(fluorescence recovery after photobleaching)法によるRNA polIIoの損傷箇所での滞留時間測定法の確立等)に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TC-NERのin vitro再構成実験系を確立する事は、本研究の目的を達成するための要となる部分である。再構成系を確立するためには、純度の高いTC-NER関連因子の精製が重要である。現在までに、TC-NER開始反応に必要なTC-NER関連蛋白質(UVSSA, CSA/CSB複合体等)とRNA polII複合体の精製に成功した。試験管内で、リン酸化RNA polII、ユビキチンリガーゼE1/E2/E3、ユビキチン、UVSSA、CSA/CSB複合体等を加えることで、RNA polIIのユビキチン化反応が進行することを確認している。また、GFP融合したRNA polIIoを細胞イメージング技術や生化学的技術を用いて調査した結果、DNA損傷後のRNA polIIoの損傷箇所での滞留時間が、正常細胞、CS細胞、UVSS細胞において異なることが示された。この結果、UVSS患者細胞とCS患者細胞でのRNA polIIoの停止期間の長さの違い、つまり正常な転写が阻害される期間の違いが、TC-NER欠損という共通の細胞応答を示すにも関わらず、臨床症状が大きく異なる(CS: 重篤な精神神経症状や早老症等;UVSS: 軽微な日光過敏症及び色素沈着)原因であるという仮説の証明に近づいた。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、課題1)残りの未精製TC-NER関連因子について、継続して精製を行う。その後、再構成反応系により各TC-NER因子の相互関係を明らかにする。さらに、課題2)蛍光融合RNA polIIo、TC-NER関連因子を細胞内に発見し、FRET法(fluorescence resonance energy transfer)による蛋白質相互作用ダイナミクスの解析を行い、DNA損傷条件下におけるUVSSAと各因子の相互作用機序を詳細に観察する事で、RNA polIIoのユビキチン化状態とバックトラッキング反応の関係を調査する。また、プロテオミクス解析法を用いて、UVSSAによる機能的なユビキチン化を調節する因子の同定も試みる。
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