研究課題/領域番号 |
14F04102
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷 憲三朗 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (00183864)
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研究分担者 |
LIAO Jiyuan 九州大学, 生体防御医学研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | iPS細胞 / PI3キナーゼ / Pten |
研究実績の概要 |
近年、樹立されたiPS細胞は、様々な疾患に対する移植医療の細胞ソースとして大きく期待されている。しかし、iPS細胞を実際に再生医療に使用するまでには解決しなければならない様々な問題がある。これらは大きく分けて、①iPS細胞作製効率の低さ、②外来性遺伝子導入細胞の癌化の可能性、③目的の機能を保持した分化細胞への高効率分化誘導技術の不十分さ、が挙げられる。申請者はiPS細胞作製効率の低さを注目し、iPS細胞作製時にOKSM遺伝子導入に加え、PI3キナーゼの抑制因子であるPtenをその阻害剤bpV(HOpic)を用いて機能抑制し、PI3キナーゼシグナルを活性化することで、iPS細胞樹立効率が有意に高くなることを明らかにした。さらには、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるVPAとbpV(HOpic)を併用すれば、bpV(HOpic)単独使用時よりもさらにiPS細胞作製効率が高まることが明らかになった。 本研究は上記の問題を解決に導くためには、分化した体細胞からiPS細胞が樹立されるまでのゲノムのリプログラミング過程における分子機構を理解することが不可欠であると考えております。 これらの研究により、マウスiPS細胞においてそのiPS細胞の作成効率を比較的効率的に樹立することが可能となった。そこで、 OKSMを、レトロウイルスベクターを用いてヒト線維芽細胞(BJ) に導入したところ、ヒトiPS細胞作製過程で一時的にbpV(HOpic)を使用すれば、iPS細胞作製効率が飛躍的に高まることが確認した(約7倍)。一方、マウス細胞で観察されたバルプロ酸の効果は認めなかった。ヒトbpV-iPS細胞は、アルカリフォスファターゼ陽性、ES細胞マーカーであるNANOG、TRA-1-60とTRA-1-81陽性で未分化状態にあった。現在in vitro及びin vivoで3胚葉への分化能を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、マウスiPS細胞においてそのiPS細胞の作成効率を比較的効率的に樹立することが可能となった。そこで、 OKSMを、レトロウイルスベクターを用いてヒト線維芽細胞(BJ) に導入したところ、ヒトiPS細胞作製過程で一時的にbpV(HOpic)を使用すれば、iPS細胞作製効率が飛躍的に高まる(7倍)ことが確認できており、ヒトリプログラミングされる際の分子メカニズムの同定することが可能になる。このことから次年度に向けての準備が進んだ終と評価し、全体研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの私達の研究により、マウスiPS細胞においてそのiPS細胞を比較的効率的に樹立することが可能となった。iPS細胞を作成する段階において、細胞のゲノムがOKSMによりリプログラミングされる際の分子メカニズムを明らかにし、その知見を利用した革新的なiPS細胞作製法の開発が必要である。 フィーダー細胞を使用した方法ではリプログラミングされた細胞による影響があるので今後はフィーダーフリー培養法を用いてリプログラミング過程において活性化される因子の動態解析を行っていく。 さらに、可能であれば同定されたリプログラミング促進因子(X)をOKSMと同時に発現させることのできるpLentiーOKSMXを作製し、BJ細胞に遺伝子導入することによりiPS細胞を作製し、その作製効率について検討を行う。新規に作製されたiPS細胞がES細胞と同様、未分化状態にあり、多能性と自己複製能を併せもっているかについて検討するため、まずOCT3/4などの内在性ESマーカーを発現しているのか、RT-PCR法及び免疫細胞染色法にて検討する。次に、in vitroにおける各種系列細胞への分化能を調べるとともに、免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成実験を行う。
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