研究課題
本研究では、安価なナノシート状材料をTiO2光触媒の表面に担持することで可視光応答化する方法について、理論的に検討することを目的とする。初年度はナノシート状材料/TiO2界面の研究に取りかかる前段階として、新規シート状材料の結晶構造探索に取り組んだ。特に、シート状材料として混合価数酸化スズSnxOyに着目している。2価のスズイオン(Sn2+)を含む酸化物が可視光照射下での光触媒水素発生反応に対して好ましい電子構造を持つ可能性があるという理論予測に基づき物質探索を行ったところ、2価のスズイオン(Sn2+)と4価のスズイオン(Sn4+)からなるスズ酸化物:Sn3O4が光触媒活性を示すことが理論的に示唆された。この予測は実験的にも検証され、アルコール水溶液からの水素発生反応に対して比較的高い活性を示す事が理解された(ACS Applied Materials & Interfaces, 6, 3790-3793, 2014.)。更に、USPEXと呼ばれる結晶構造予測プログラムを用いて、SnxOyの未知の組成の結晶構造を計算科学的に見出すことを試みている。本成果の途中経過を米国物理学会にて報告した。層状構造を有するSnxOyを一層だけ剥がしてTiO2と組み合わせることで、更に活性の高い材料を設計出来ると期待される。もう一つの安価なシート状材料の候補として、g-C3N4に着目している。近年、g-C3N4が可視光応答型の光触媒であることが報告されていることから、この材料をTiO2の助触媒として表面に担持する方法を理論的に検討中である。初年度はまだよく知られていない、g-C3N4の結晶構造を探索する作業から進めている。本成果は、2015年12月にハワイにて開催されるPacifichem2015にて報告する予定である。
2: おおむね順調に進展している
可視光吸収体であるSn3O4やg-C3N4の研究で大変良い成果を上げているが、それらとTiO2の界面の研究はまだ着手したばかりであり、目標達成のために本年度集中して取り組む必要がある。
前年度に発見したシート状材料SnxOy、g-C3N4やよく知られたシート材料であるグラフェン、h-BN、MoS2等をアナターゼTiO2の表面に担持した界面モデルを作成し、第一原理計算を実施することで電子状態の観点から光触媒としての適正を評価する。また、シート状材料の表面における水素発生反応の可能性、H2OとCO2からメタノールが生成される人工光合成の可能性を調べることで有望な材料を理論的に見出す。適宜、電子状態計算と分子動力学シミュレーションを駆使して研究を進める。
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ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES
巻: 6 ページ: 3790-3793
10.1021/am500157u
http://www.nims.go.jp/news/press/2014/03/p201403241.html