研究実績の概要 |
本研究ではSnxOyの結晶構造を計算科学的に探索した。その結果、SnxOyのいずれの組成でもSnO, Sn3O4, Sn2O3の3種類の基本ユニット層の組み合わせで形成されていることが理解された。これらの構造の多くは、SnOとSnO2の混合物よりもエネルギー的に安定であり、合成方法が確立されれば実際に合成できる可能性が高い。実際、Sn3O4は水熱合成によって作成された。更にSnxOyのバンドギャップは層間距離に比例することが見いだされた。各エネルギー準位がどのような結合に起因するのか詳細に調べた結果、2価のスズを含むこれらの層状材料では、Sn2+ - Sn2+層間相互作用と、Sn2+ - O2-層内相互作用がバンド端の電子状態を決めており、層間距離との相関が理解された。各組成のパンドアラインメントから2価のスズを含む多くの混合価数酸化スズは光触媒水素発生材料に適している事が理解された。Sn3O4の固有欠陥の物性を詳細に調べたところ、有意な電気伝導は示さない事が示唆された。2価のスズを含む混合価数スズ酸化物では2種類の遷移があるのでバンドギャップ以上のエネルギーを有する光に対する吸収係数の立ち上がりが大きい。また、組成の制御で光吸収係数をコントロールできるので、異なる組成の酸化スズを用いてスタック構造を形成すれば多接合太陽電池になる事が予想される。
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