昨年度に引き続き、チオアミドのダイレクト型触媒的不斉アルドール反応におけるレトロ反応の問題解決に傾倒した。レトロ反応の進行は生成物の光学純度低下に直結するため、ダイレクト型反応における不斉反応では重大な問題となる。基質として立体障害の大きい分岐状構造を有するアルデヒドとの反応において、その生成物の相対的な熱力学的不安定性に起因してレトロ反応が顕著に見られることがわかり、本基質を用いてレトロ反応抑制法を探った。生成物と同様の部分構造を有する化合物を添加することで、触媒との錯形成過程で生成物と競合してレトロ反応サイクルへの導入を大幅に遅延させることができることを見出した。本手法により、種々の分岐状構造を有するアルデヒドにおいてもチオアミドをエノラート前駆体とするダイレクト型アルドール反応が時間依存性のない立体選択性で目的生成物を与える信頼性の高い触媒反応条件を同定することに成功した。
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