研究課題/領域番号 |
14F04302
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
湯浅 邦弘 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30182661)
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研究分担者 |
CAO Fangxiang 大阪大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 上海博物館蔵戦国楚竹書 / 楚国故事 / 古文字学 / 国際情報交換 / 中国 |
研究実績の概要 |
1.上博楚簡の研究 2014年11月1日に曹方向が外国人特別研究員として来日して以降、上海博物館蔵戦国楚竹書(上博楚簡)の楚国故事類文献の整理と研究を共同で進めた。本年度はそのうち、『命』と『君人者何必安哉』を主な研究対象とした。曹方向が執筆した論文「上博簡《命》篇“金攴”字試解」(「金攴」は偏が「金」、旁が「攴」の一字)および「上博簡《君人者何必安哉》短札二則」はその研究成果である。前者は、清華大学蔵戦国竹簡『筮法』などの戦国文字資料をもとに、「金攴」は「陷」と釈読できることを指摘し、伝世文献に見える「五諫」の中の「陷諫」「カン諫」(カンは偏が「章」、旁が「夂」+「貢」の一字)について新たな解釈を提示した。後者は、本文中の「戔」「一人杜門不出」などの字句について検討を加え、そのうち「一人杜門不出」の釈読については、本篇全体の解釈にかかわる重要な語句であることが明らかとなった。 2.懐徳堂文庫所蔵文献の研究 大阪大学附属図書館の懐徳堂文庫には、安井息軒による『管子』の注釈書『管子纂詁』が収蔵されている。この文献は、日中双方で重要視されている注釈書の一つである。懐徳堂文庫所蔵本には朱筆・藍筆・墨筆の三種の書き入れが見られ、それらについて、曹方向が草野友子氏(京都産業大学特約講師)と共同で基礎的な整理を行った(「懐徳堂文庫所蔵『管子纂詁』書き入れの初歩的整理」)。 3.学会・研究会 上記の研究成果は、2014年12月に、中国出土文献研究会の第56回研究会(於大阪大学)、および2014年度第3回懐徳堂研究会(於大阪大学)にて口頭発表を行った。また、「中国出土資料学会」平成26年度大会(第2回例会・第3回例会、於東京)、第71回上海博楚簡研究会(於東京)、「漢字学研究会」(第29回・第30回、於京都)などに参加し、出土文献を専門とする研究者との学術交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、本年度は楚国故事類文献の文本(テキスト)の再整理を行った。特に大きな進展としては、難読箇所が多数存在する上博楚簡『君人者何必安哉』の再検討を行い、釈読をほぼ確定することができた。また、歴史にかかわる問題として、『春秋左氏伝』に見える沈尹戌と「臣闔閭」の記載について新たな解釈を提示することができた。来年度も引き続き、文本の再整理を中心に研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
上博楚簡以外の出土古文字資料を使って難読文字を再検討していくことが今後の推進方策の一つである。たとえば、上博楚簡『命』の中で確定できなかった文字は、近年、清華大学蔵戦国竹簡の『筮法』が公開されたことによって再検討が可能となり、解釈を確定することができた。研究期間内には、上博楚簡の第十分冊や、清華簡などの関連する新資料が公開されるとみられ、それらについても研究の対象としたい。 また、国内外の学会や研究会に積極的に参加して専門家と学術交流を行い、日中双方の研究成果に触れることによって、研究をより進展させていきたいと考えている。
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