研究テーマ「言語拡散及び言語変化のメカニズムに関する日中対照研究」をめぐって、外国人特別研究員(李仲民)と研究代表者(岩田礼)が共同研究を展開した。28年度は最終年度に当たり、外国人特別研究員は10月で任期を終えたため、2年間の共同研究の総括と研究成果の公表に力点を置いた。 外国人特別研究員は、来日以来収集した方言データに基づいて方言地図とグロットグラムの作成を進めた。受け入れ研究者は、それらの資料を日本語方言に関する地図やグロットグラムと比較・検討することを通じて、どのような環境(地理、社会、歴史等を含む)がどのような変化の類型を形成するかについて、理論的検討を行なった。それら研究の成果は、2016年7月に北京で開催された国際会議(Anuual Conference of International Association of Chinese Linguistics)で、二人がそれぞれ発表した。また、日本方言研究会の機関紙である『方言の研究』編集部からの依頼により、共同研究の成果を2篇の論文にまとめた。 2年間の共同研究を通じて、外国人特別研究員は中国における数度の現地調査によって、多くの貴重なデータを収集し、方言伝播に関する知見を蓄積した。当初予定した富山県・庄川流域の調査は十分に達成できなかったが、富山大学・中井精一教授から当該地域に関するデータの供与を受け、中国と日本の対照研究に資することができた。その成果は、『第3回中国地理語言学研討会論文集』(2016)に掲載された論文などに反映されており、中国における関連研究にもインパクトを与えうるものである。
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