研究実績の概要 |
Fetuin-Aは肝臓で合成され血中に分泌される脂肪酸結合蛋白である.骨格筋や脂肪組織におけるインスリンシグナル経路の抑制,マクロファージにおける炎症性サイトカイン産生を刺激することによりインスリン抵抗性を引き起こすことが判明されている.一方,NAFLDの病態形成にはインスリン抵抗性が主役を演じていることより,fetuin-Aの増加はNAFLDの病態形成と強く関連している可能性がある.そこで本研究では,成人男性を対象に血中fetuin-A濃度の測定を行い,インスリン抵抗性をはじめとするNAFLD病態因子との関連性について検討した.また,3ヶ月にわたる食事運動指導による生活習慣介入による血中fetuin-A濃度の変動についても検討を行った. Saadeshらによる肝脂肪化grade分類(G0-G3)によるfetuin-A濃度(μg/mL)は,G0:220.4, G1:234.8, G2:271.3, G3:275.7であり,G0とG2, G3,また,G1とG3の間に有意差が示された.高度脂肪化例で高値を示した.Fetuin-A濃度により3群(low:179.8,moderate:256.8,high:351.9)に分類して比較した結果,肝弾性度,肝脂肪化度,HOMA-IR,BMI,空腹時血糖値,高感度CRP,adiponectinの項目において,low群とhigh群の間に有意差が示された.Fetuin-A濃度の高値群ではNAFLD病態因子の悪化が観察された.また,NAFLD肥満者に対する3ヶ月間の食事運動介入の結果,fetuin-A濃度は1ヶ月後(-16.2%),3ヶ月後(-26.2%)と減少した. NAFLDにおける血中fetuin-A濃度は高度脂肪化例で高値を示し,NAFLD病態因子の悪化と関連していた.また,食事運動指導による生活習慣改善により,NAFLD病態因子の改善と関連しながら,血中fetuin-A濃度は減少していくことが明らかになった.
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