研究実績の概要 |
非平面芳香族炭化水素であるコラニュレン (C20H10) などのバッキーボールは、特徴的な湾曲構造に由来する興味深い構造と性質を示す。本研究課題では、Topolinski氏と受入研究者が共同して研究を進めることにより、コラニュレンなどの非平面芳香族炭化水素の周縁炭素上を多数金属イオンでシクロメタル化することにより、その基礎的性質とともに超分子化学的な特性を明らかにすることを目指している。具体的には、コラニュレン周縁部がピリミジンやチアゾールなどの配位環で多数置換された複数のコラニュレン配位子を合成する。例えば、コラニュレンの1,3,5,7,9位が2-ピリミジンで置換された1,3,5,7,9-penta(pyrimidin-2-yl)corannuleneを合成し、コラニュレン周縁部の五カ所でシクロメタル化された五核コラニュレン金属錯体の合成を試みた。NMR測定により、白金イオンやパラジウムイオンとの錯体形成は確認できたが、配位子の溶解性に問題があったため、分離精製が困難であった。そこで、ピリミジン環に長鎖アルキル基を導入し、この配位子と白金イオンあるいはパラジウムイオンとの錯体形成を行ったところ、目的物の対象性に合うNMRスペクトルが得られた。現在、分離精製を検討している。また、ピリミジンの代わりに金属イオンとの結合能が高いチアゾール環の導入した配位子も合成したが、同様に溶解性に問題があり、現在溶解性を向上させるための置換基の導入を検討している。
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