本研究では、過去に、開環体に紫外光照射をすると閉環体ではなく縮環体の配列が観察された、アミド基を導入したジアリールエテンについて、単離した開環体、閉環体、縮環体にの表面被覆率の濃度依存性を調査し、吸着挙動に対する知見を得ることを目的とした。その結果、開環体は協同性の無いisodesmicな吸着挙動を示したのに対して、閉環体は非常に高い協同性の吸着挙動を示すことが明らかとなった。また、縮環体は溶液中の分子すべてが吸着されるほど高い吸着能を示すことが分かった。次に、開環体/閉環体の混合溶液での表面被覆率の濃度依存性を調べた結果、閉環体の割合が高い時は閉環体の配列が、開環体の割合が高い時は開環体の配列が観測された。閉環体配列の濃度依存性では、閉環体単独の濃度で予想されるよりも高い表面被覆率が混合溶液で観測されたことから、開環体と閉環体が混ざった混晶の形成が示唆された。さらに興味深いことに、開環体配列の濃度依存性では、開環体のみの場合には協同性を示さずにisodesmicな吸着挙動であったのが、閉環体を混在させることにより、協同性が発現することが明らかとなった。混晶の形成が、配列プロセスにまでも影響を与えていることが分かった。このように、協同的組織化モデルを用いて配列形成を解析することにより、分子配列の形成メカニズムを詳細に検討することができるようになり、光応答性分子配列の設計のための非常に重要な知見が得られることが明らかとなった。
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