研究課題/領域番号 |
14F04342
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 栄一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00134809)
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研究分担者 |
SHANG Rui 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 鉄触媒 / 炭素水素結合活性化反応 / 有機ホウ素化合物 / 有機アルミニウム化合物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,環境調和性に優れた鉄を触媒として用いることで,温和な反応条件下,炭素-水素結合活性化を基軸とした触媒的不斉合成開拓である.当研究室で有機亜鉛試薬を用いたC(sp2)-HおよびC(sp3)-H結合を直接官能基化する反応を開発してきたが,この反応系では有機亜鉛による鉄触媒の還元を主とする副反応が競合し,反応系中での配位子の脱着が起きるために,エナンチオ選択的な反応に用いることは困難であった.有機亜鉛化合物よりもずっと安定で還元性も持たない有機ボロン試薬を用いることでこれらの問題を解決することを着想し,当研究室で有機ボレートによるsp2炭素-水素結合活性化反応を最近報告した.26年度に,配位子設計によりsp3炭素-水素結合活性化反応の開発にも成功したが,その反応において様々な不斉配位子を用いた結果,反応が進行しなかった.この問題を解決するため,もっと安定かつ効率的な鉄触媒種を設計することにした.その結果,トリメチルアルミニウムなど有機アルミニウム試薬を用いることにより,C(sp2)-HおよびC(sp3)-H結合活性化反応を見出した.この反応は適用範囲が広く,芳香族,ヘテロ環,アルケン,およびアルカンアミド類,または芳香族またはベンジルアニリド類のメチル化またはアルキル化反応が高収率で進行した.また,触媒効率が炭素-水素結合活性化反応のなかでとても高い(TON=6500)とわかった.この反応は様々な配位子系が利用可能であったため,不斉反応への展開が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
炭素-水素結合活性化を基軸とした触媒的不斉合成を目指して,有機アルミニウム試薬を用いた高い効率(TON=6500)の鉄触媒系を開発した.この反応は有機アルミニウム試薬を用いた炭素-水素結合活性化反応の初めての例である.
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今後の研究の推進方策 |
有機アルミニウム試薬を用いた炭素-水素結合活性化反応において不斉配位子を検討し,例えばフェロセン誘導体やプロキラルな基質を用いたC(sp2)-HやC(sp3)-H結合の活性化などの検討を行う予定である.トリメチルアルミニウムを用いた鉄触媒によるメチル化反応は前例がないため,特にアルミニウムと鉄のトランスメタル化について実験および理論により反応機構を明らかする予定である.
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