研究課題/領域番号 |
14F04345
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
君塚 信夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90186304)
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研究分担者 |
ASTHANA Deepak 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ナノ粒子 / 一次元錯体 / 混合原子価 / 半導体 |
研究実績の概要 |
本研究は、一次元混合原子価金属錯体や半導体ナノ粒子、ペロブスカイト型金属ハロゲン化物をカチオン性有機分子により被覆し、その集積構造を制御することにより新しい発光材料や強誘電性ナノ材料を開発することを目的とする。本年度は、飽和または不飽和アルキル基を有するアンモニウム脂質を合成し、有機溶媒中での自己組織化による半導体ナノ粒子の一次元配列制御ならびに鉛ハライド構造の次元制御と発光特性について検討した。半導体ナノ粒子としてカルボキシレート基を表面修飾したCdTeやCdSe/ZnSを用いアンモニウム脂質と混合し、クロロシクロヘキサン中に分散させた。透過型電子顕微鏡(TEM)により得られた構造体の形態観察を行った結果、アンモニウム脂質が半導体ナノ粒子の表面を被覆していることが分かった。しかしながら,半導体ナノ粒子は脂質分子から成るナノファイバー構造の中に取り込まれることはなかった。現在,半導体ナノ粒子のサイズや表面官能基を系統的に変化させ、脂質分子との自己組織化により一次元配列が達成される条件を検討中である。 一方、これとは別に臭化鉛とアンモニウム脂質を混合し得られた複合体をTHF中に分散させ、その分光学的な特性を調査した。吸収ならびに発光スペクトル測定を行った結果、一次元 PbBr3 構造に特徴的な吸収(310 nm)ならびに発光(600 nm)が観測された。また興味深いことに、UV 光照射や加熱によって、発光強度が劇的に増大することを見出した。現在、そのメカニズムを解明するために光照射前後における動的光散乱測定や質量分析、X線回折測定等を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、paddle wheel型の混合原子価金属錯体として[Pt2(pop)4I]やRu2(O2CR)4I錯体を合成し、またアニオン性 [Pt2(pop)4I] 錯体の対イオンとして様々なカチオン性被覆分子を合成する予定であった。混合原子価金属錯体の合成には未だ着手していないが、種々のアンモニウム脂質を合成しアニオン性半導体ナノ粒子や臭化鉛との複合体を調製した。また、有機溶媒中における自己集合ならびに分光学的特性についても検討し、臭化鉛/脂質複合体において光照射や加熱によって発光強度が増大するという興味深い光学特性が発現することを見出した。種々の分析手法を用いてそのメカニズムを解明する必要があるが,おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた研究成果を基にして、①脂質分子との自己組織化による半導体ナノ粒子の一次元配列制御について検討する。ナノ粒子の表面に脂質分子との水素結合が可能なフェノール基などを導入する。また、比較的サイズの大きな半導体ナノ粒子(約10 nm)が脂質ナノファイバー構造に取り込まれるように、アルキル鎖数や鎖長を増やした脂質分子に系統的に合成する。また、異なるサイズの半導体ナノ粒子を混合し、一次元交互集積やブロック集積化について検討する。このように、半導体ナノ粒子の集積構造を精密に制御することにより,新しい光学特性を示す有機-無機複合ナノ材料を創製する。②臭化鉛/脂質複合体については、X線結晶構造解析により鉛ハライドの構造を決定し、光照射や加熱によって、構造変化が誘起されるか否かを調査する。また、有機カチオンの分子構造や溶存酸素の影響について検討し、光誘起の発光増大メカニズムの解明に取り組む。
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