研究実績の概要 |
1,2-dioleoyol-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[4-(p-maleimidophenyl) butyramide] (MPB-PE; Avanti Polar Lipids)と3’末端をチオ化した24ヌクレオチドをマレイミドとの架橋反応を利用して結合させ、次に、MPB-PEに結合させたセンス鎖およびアンチセンス鎖を混合することによって、ハイブリダイゼーションさせ、2本鎖DNA-PEミセル複合体の形成を試みた。しかしながら、予想されたミセルは得られなかった。そこで、センス鎖とPEを結合させた分子のみでミセルを形成させ、その後、アンチセンス鎖を添加することによって、PE-センス鎖ミセル複合体のセンス鎖にアンチセンス鎖をハイブリダイゼーションさせた。このPE-2本鎖DNA複合体は、2本鎖DNAがPEから髪の毛状に伸びた状態であると考えられる。次にこのPE-2本鎖DNA複合体でマウスマクロファージを刺激し、炎症性サイトカインとI型インターフェロン (IFN) の誘導を調べが、いずれのサイトカインの誘導も観察されなかった。この原因は、PE-2本鎖DNA複合体の2本鎖DNAが細胞質DNA受容体に認識されないか、あるいはマクロファージ刺激のための添加量が少ないかのどちらかであると考えられた。PE-2本鎖DNA複合体を大量に合成するのは困難なため、PE-2本鎖DNA複合体をDOTAPあるいはリン酸カルシウム粒子に静電相互作用で搭載し、マクロファージへの取り込み効率の向上を試みた。その結果、PE-2本鎖DNA複合体をリン酸カルシウム粒子に搭載した二重複合体で顕著なI型インターフェロンの誘導が観察された。また、PE-2本鎖DNA複合体の2本鎖DNAにCpGを含む場合の方がCpGを含まない場合にくらべてI型IFNの誘導量が高かったことから、CpGを含む場合は、エンドソームのTLR9と反応し、その後、エンドソームからの脱出が起こり、細胞質DNA受容体との反応が起こること考えられた。
|