研究実績の概要 |
インフルエンザウィルスが宿主細胞から放出される段階で働くシアリダーゼの阻害剤は、抗ウィルス薬として有効である。これまでタミフルやリレンザなどが上市されてきたが、耐性ウィルスの出現や副作用などの問題から新規薬剤の開発が望まれている。我々は、2,3-ジフルオロシアル酸がシアリダーゼを不可逆的に阻害することを明らかにした。この結果に基づき、より強固な結合能を求めて、全てのシアリダーゼ活性中心にある三つのアルギニン残基と結合する、アノマー位カルボキシ基の代替を検討した。カルボキシ基の代替としてホスホノ基が有効であるとの知見を参考に、より電子吸引性の大きいスルホ基の導入を試みた。 シアル酸誘導体のアノマー位をSAc基で置換しO,S-アセタール及びそのグリカールに導いた。各々を Oxoneで酸化してスルホン酸塩に導き、脱保護によりスルホシアル酸類を得た。 スルホシアル酸類のインフルエンザウィルス (H2N2)、ウェルシュ菌 (Clostridium)、連鎖球菌 (Streptococcus) のシアリダーゼ阻害活性試験を行った。エクアトリアル型スルホシアル酸はN2に対してエクアトリアル型ホスホン酸より40倍強力であり、アキシアル型スルホシアル酸とグルカール型スルホシアル酸も強い活性を示した。エクアトリアル型スルホシアル酸はウェルシュ菌と連鎖球菌にも効果があった。 スルホ基は、アノマー位官能基として最強の活性を示すというこれら結果は、スルホシアル酸を基盤とする次世代型不可逆的阻害剤の開発に繋がる成果である。
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