研究課題
ヨーロッパにおいてもその脅威が日々増しているマツ材線虫病は、主病原体がマツノザイセンチュウであり、Monochamus属カミキリがベクターとなり、その地域のマツ樹種を枯死させる世界規模での森林病害である。我々はマツ枯れ病環境下に存在する細菌を第4の因子として捉え、それら生物間相互関係を理解しながらマツ枯れ病メカニズムを解明してゆくことを目的とする。昨年11月より研究分担者が加わり、ポルトガルのマツ枯れ病被害地計数十か所における健全木および枯死木中のマイクロバイオームについてDGGE解析をおこなった。地域が異なっても、樹木内細菌種パターンは共通しており、枯死前と後とで特徴を示した。また、マツノザイセンチュウ随伴細菌Serratia quinovorans LCN4を選びゲノム解析をすすめ、残り12か所のギャップを埋めるのみである。また、マツ枯れ病による枯死前後の樹体内細菌種構成および細菌発現解析をおこなうための予備実験として、2年生マツ苗を使い樹体内より細菌RNA抽出方法の検討をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
11月に分担者が来日する以前より共同研究を続けており、密に連携をとりながら準備を進めていたため、来日と同時に研究に着手することができた。2015年度に本格的な解析にとりかかる予定であり、その予備実験もほぼ計画通りの結果を得ることができた。
今年度は実験系にてマイクロバイオーム解析を進める。接ぎ木3年生クロマツ(感受性クローン)を準備し、初夏にマツノザイセンチュウを感染させ、①発病初期(針葉の褐変開始)及び②完全枯死、の2種類の時系列でマツ材から細菌DNAおよび細菌RNAを抽出し、細菌種構成の変化とそれら細菌の遺伝子発現変化をみることができる。材内からの細菌RNAを抽出すること、さらに転写産物だけを選択することは非常にチャレンジングであると予測できるが、昨年度の予備実験からスケールアップすることで克服できると考えている。また、随伴細菌のなかから数種類を選び、マツ材抽出液を用いたトランスクリプトーム解析も同時に進めてゆく。この方法であれば、特定の細菌由来の転写産物を確実に捉えることができ、上記マイクロバイオーム解析と比較ができる重要な標準データとなるはずである。さらに、昨年度より進めていた随伴細菌S. quinovorans LCN4のギャップを埋め、完全ゲノム配列の解析を目指す。
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Environmental Microbiology Reports
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http://www3.chubu.ac.jp/faculty/hasegawa_koichi/