研究課題
マツ材線虫病の病原体であるマツノザイセンチュウ表面に随伴する細菌の種類やその特徴については、これまでに報告を重ねてきた(Vicente et al., 2013; Nascimento et al., 2015)。今回、日本におけるマツノザイセンチュウのベクターM. alternatus、およびヨーロッパにおけるマツ枯れ病被害国のポルトガルでのベクターM. galloprovincialisの気管内に存在する細菌の種構成について、16SrDNA のV4 領域をもとにしたメタゲノム解析により調べることができた。今回の結果を合わせて、ザイセンチュウ表面、マツ枯死木あるいは健全木中の細菌叢を比較することができ、それぞれの環境における特異性と同時に、マツ枯れ病環境としての共通性を見出すことができた。この結果はScientific Reportに論文が掲載された。また随伴細菌S. marcescens PWN146およびS. quinovorans LCN4のゲノム解析を進めてきたが、2015年度に巨大プラスミドの全長を読むことができたこと、さらにいくつか繋がらなかったScaffold間のギャップを埋めることに成功し、随伴細菌2種の完全ゲノム配列の解析がほぼ完成でき、現在それぞれについての論文を準備中である。同時に、マツ枯れの進行に時系列に即した、マツ内生細菌のメタゲノムおよびトランスクリプトーム解析をすすめているが、細菌と植物葉緑体との分離する条件が難しく、引き続き試みているところである。
2: おおむね順調に進展している
マツ内生細菌のメタゲノムおよびトランスクリプトーム解析の条件検討がうまくいかず、当初の計画通り達成できていない。一方、随伴細菌S. marcescens PWN146のゲノム解析については、高度のリピート配列を有する2つの巨大プラスミドのおかげでその全配列を明らかにすることに困難を極めていたが、2015年度に完全長を読むことができたことは大きな進歩であるといえる。
本申請研究のまとめの年度であり、取得した2種の随伴細菌ゲノム① S. marcescens PWN146およびS. quinovorans LCN4の解析を終了させ、それぞれ別々に論文投稿をおこなう。マツ内生細菌のメタゲノムおよびトランスクリプトーム解析については、マツへの細菌および線虫感染実験を昨年度終了し、サンプリングも終了している。したがって、サンプルから細菌と植物葉緑体との分離する条件検討を引き続き進めながら、データの取得を目指す。6月にアメリカで開催されるASM Microbe 2016、および9月に東京農工大で開催される日本線虫学会にVicente博士が参加して、これまでの研究成果を発表する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23908
10.1038/srep23908
BMC Genomics
巻: 17 ページ: 301
10.1186/s12864-016-2626-1
PLOS ONE
巻: 10 ページ: e0123839
10.1371/journal.pone.0123839
http://www3.chubu.ac.jp/faculty/hasegawa_koichi/