研究課題/領域番号 |
14F04398
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
白樫 正 近畿大学, 水産研究所, 講師 (70565936)
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研究分担者 |
SHIN SANG PHIL 近畿大学, 水産研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 魚病 / 寄生虫 / 粘液胞子虫 / プロテアーゼ / 系統解析 / クドア |
研究実績の概要 |
クドア属粘液胞子虫は海産魚に寄生し、商品価値を低下させるため養殖産業で問題となっているだけでなく、近年は食中毒の原因体として公衆衛生上の問題にもなっている。本研究ではクドアの防除法開発のため、Kudoa yasunagaiをモデルとし、魚体への侵入機構や生活環の解明を目指した。例年K. yasunagaiの寄生が見られる種苗生産施設でヒラマサ稚魚を飼育し、血液、鰓、消化管、筋肉等、魚体の部位別の寄生を経時的に調べた結果、本虫の侵入門戸は腸管である可能性が示され、魚への侵入機構を把握する端緒が得られた。前年度に引き続いて実施している海水中からの感染体検出ではPCR法を改良した結果、検出感度とPCRの特異性が向上し、海水サンプルからの検出率は上昇したものの、感染体の特定には至っていない。また、中間宿主を特定するため、汚染海域で採取した無脊椎動物(主に環形動物)の検査も継続して実施しているが、こちらも特定には至っていない。一方、これまでに研究から飼育用水を紫外線することで寄生を防げることが分かっているため、異なる照射量で処理した用水でヒラマサ稚魚を2か月間飼育し、最低有効照射量を調べたところ、5mJ/cm2で大幅な寄生軽減効果が認められ、最低有効量は5 ~15mJ/cm2の間であることが判明した。これにより、クドアは飼育施設で通常用いられる紫外線処理で充分防除できることが分かった。別途、パナマのサワラ類から採取したクドアを調べたところ、未記載種であることが明らかになったため、これを記載した。同時にこれまで遺伝子情報が登録されているクドア全種を対象として、寄生部位や寄生様式から系統解析を行い、投稿論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クドアの魚体への侵入門戸、体内で胞子形成するまでの大凡の経路や発育時間は把握できたが、組み換えワクチン作製への糸口となるプロテアーゼ解析については進捗が遅れている。また、ある程度予想されたことだが、未だ感染体および中間宿主の特定には至っていない。感染体については、5~10umフィルターでの検出率が高く、大凡の大きさが示された。また、PCRによる検出方法の改良がなされた。一方、実用的な防除法として用水の紫外線処理法を確立した。また、当初予定していなかった、クドア属の新種記載と系統解析については一定の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
残された研究期間が限られていることから、組み換えプロテアーゼだけではなく、魚体内の寄生ステージである粘液胞子を直接魚に接種し、ワクチン効果を調べる試験も検討する。クドアは培養ができないため、粘液胞子は大量に採取が可能な別のクドア種を用いる。また、最終年度であるため、データの取り纏めにも注力する。現在昨年度の試験結果について論文2報の投稿準備をしている。
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