研究課題/領域番号 |
14F04401
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
横山 直明 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (80301802)
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研究分担者 |
TSERENDORJ MUNKHJARGAL 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ピロプラズマ / 併用治療 / マウスモデル / in vitro スクリーニング / 組換え抗原 / サイトカイン / 免疫グロブリン |
研究実績の概要 |
本研究は、副作用が少なくより効果的な新規薬剤と免疫賦活剤・ワクチンを併用し、治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規の制圧戦略の構築を目的としている。27年度は、種々の疾病の薬剤標的として注目されているメチオニン・アミノペプチダーゼ(MAP)の牛バベシア(B. bovis)における探索を行った。最初に、B. bovis MAPの遺伝子解析を行い、その遺伝子情報に基づき組換えMAPを作製し、その生化学的性状、局在について検討を行った。その結果、MAPはB. bovis の細胞質に存在し、pH7.5で最大の酵素活性を示した。アマスタチンとベスタチンはMAPの活性を阻害し、更にB. bovisの増殖を抑制する事が明らかにされた。また、B. microti感染マウスにアマスタチンとベスタチンを投与すると原虫の赤血球寄生率が抑制され、高濃度のサイトカインと免疫グロブリンの産生が認められた。次に3種類のバベシア(B. bovis, B. bigemina、B. microti)に共通な抗原であるプロフィリン(PROF)について、それぞれの組換えPROFを作製し、その局在、交差免疫性について検討した。その結果、PROFは原虫の細胞質に存在し、これらのPROFでマウスを免疫すると高力価のサイトカインと免疫グロブリンの産生が認められた。更に、免疫マウスにB. microtiを攻撃感染させると、対照群に比べて高い免疫効果が認められた。最後に、ハンセン病の治療薬であるクロファジミンのバベシア原虫に対する増殖抑制効果について検討を行った。その結果、クロファジミンは培養牛および馬プロプラズマ原虫に対して現在使用されているジミナゼンと同程度の低いIC50が認められた。更に、バベシア感染マウスを用いた経口投与の治療実験により、ジミナゼンと同等の優れた高い治療効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の疾病の薬剤標的として最近注目されているメチオニン・アミノペプチダーゼ(MAP)の牛バベシア(B. bovis)における探索を行った。その結果、MAPはB. bovisにも存在し、酵素活性を有する事が確認された。更にMAPの阻害剤であるアマスタチンとベスタチンはB. bovisの増殖を抑制し、B. microti感染マウスにおいてその治療効果が認められ、新たな抗バベシア薬として可能性を示した。また、3種類のバベシア(B. bovis, B. bigemina、B. microti)に共通な抗原であるプロフィリン(PROF)は、マウスを免疫すると高力価のサイトカインと免疫グロブリンを産生し、B. microtiのPROFで免疫したマウスで高い防御免疫効果が認められた。更に、クロファジミンは培養牛および馬プロプラズマ原虫に対して現在使用されているジミナゼンと同程度の増殖予定効果を示し、バベシア感染マウスにおいてもジミナゼンと同等の優れた高い治療効果を示した。特にクロファジミンは既に人のハンセン病の治療薬として安全性も確認され、かつ経口投与が可能であり、人バベシア症の新たな治療法として可能性が高い。以上の結果は、副作用が少なく効果的な薬剤と免疫賦活剤を併用し、治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規の制圧戦略の構築を更に推進するための新たな選択肢を提供した。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
治療と予防を同時に可能にするピロプラズマ症に対する新規のより効果的な制圧戦略の構築を推進するために、下記の項目について検討を進める。 1.新規薬剤と免疫賦活剤・ワクチン併用効果の検討:現在使用されているジミナゼン製剤と同等の増殖抑制効果を示したクロファジミン、アピシジン、アマスタチン、ベスタチンとジミナゼンとの併用効果について、Babesia bovis, B. bigemina, B. caballi, Theileria equi の培養システム用いて検討する。 2.マウスバベシアに対する防御・治療効果の検討:上記1の検討により、最も優れた増殖抑制効果を示した組み合わせ薬剤についてB. microti感染マウス系を用いて治療効果の検討を行う。赤血球の原虫寄生率、心臓、腎臓、脾臓等の主要臓器中の原虫の有無について、PCRや血液移入により検討する。また、感染防御を示したプロフィリン(PROF)とクロファジミン、アピシジン、ジミナゼンを併用し、B. microti感染マウス系を用いて防御・治療効果の検討を行う。 3.牛赤血球置換SCIDマウスを用いた牛バベシア原虫治療効果の検討:SCIDマウスに牛赤血球を移入して得られる牛赤血球置換SCIDマウスを用いて、準 in vivoでのBabesia bovis, および B. bigeminaに対する治療効果を検討する。
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