研究実績の概要 |
最終年度である本年度は、平成27年度から引き続き、mRNA脳室内投与の動物実験をさらに進めた。 ・mRNA脳室内投与によるタンパク発現プロファイルの確認:GFP発現mRNAを用いたタンパク発現の組織学的解析により,脳室周囲を囲む細胞を中心に,均一かつ広範にGFP発現することを確認した。ルシフェラーゼ発現mRNAを用いて,タンパク発現持続をIVISで観察すると,高分子ミセル型キャリアを用いた投与したmRNAからは24時間以上のタンパク発現が得られた。 ・ネプリライシン発現mRNAの機能評価:培養細胞を用いた追加検討で、mRNAから発現させたネプリライシンは、培地中のアミロイド(ヒトアミロイド前駆体タンパク、Aβ-40, Aβ-42)をいずれもよく分解することを確認した。 ・アルツハイマー病疾患モデルマウスに対するネプリライシン発現mRNAの投与:βアミロイド脳内注入モデルを用いて,ネプリライシン発現mRNAを高分子ミセル型キャリアを用いて脳室内投与し、24時間後の脳内アミロイド濃度を評価した。ネプリライシン発現pDNAを投与したコントロール群と比べ,mRNAでは有意に脳内アミロイド濃度の低下が観察された。またmRNA投与の安全性に関して、mRNA投与後の脳内での炎症性サイトカイン産生を定量的に評価すると、naked mRNA投与では高いサイトカイン産生が誘導されるのに対し,キャリアを用いた投与ではわずかな増加に止まり、投与後1日で正常レベルに復した。従って、キャリアによってmRNAの免疫原性が有効に制御されたことが示唆された。 以上の成果は、外部から投与したmRNAが脳内で機能しうることを示す世界で初めての成果であり、mRNA医薬実現に向けて新たな可能性を拓くものと言える。これらの成果は、DDS分野でトップの学術誌であるJournal of Controlled Release誌に論文掲載された。
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