研究課題
申請者らは、平成26年度に得られた知見から、血管障害に起因する中膜平滑筋細胞のアポトーシスが引き金となって、おそらく組織修復を目的とした増殖因子が過剰に分泌され、周囲の中膜平滑筋細胞が増殖し内膜肥厚を生じるという推論を立てた。申請者は、まず、野生型血管平滑筋培養細胞を用いるプロテイン・アレイ解析において、過酸化水素負荷による細胞アポトーシスの誘発とともに、培地GFxが多量に分泌されることを明らかにした。マウス(野生型およびカテプシンK遺伝子欠損マウス(Cat-K KO マウス))内頚動脈に障害を誘導し経時的に血漿中のGFx濃度を測定したところ、処置前には、GFxはほとんど検出されなかったが、早くも処置後4日目において増加し、その後も血漿中において高いレベルに維持されることが明らかになった。これらの変化は、カテプシンK遺伝子欠損平滑筋細胞とマウスで著名に低下することを発見した。これらのことから、カテプシンKは、平滑筋細胞のアポトーシスに誘発されるGFxを介して周囲の平滑筋細胞の増殖及び内膜肥厚形成に関与することが考えられた。マウスGFx発現プラスミドの構築とラットCHO(チャイニーズハムスターの卵巣)細胞からGFxの合成・精製に成功し、9週齢Cat-K KOマウスを無作為に2群にわけ、二重障害モデルを作製し、ビヒクル(PBS)と150μg/kg/日(GFx)をそれぞれ皮下注射にて投与した。Cat-K KOマウスにおいて病変部位の細胞増殖ならびに新生内膜の肥厚促進を示すことが明らかになった。野生型マウスにおいても同様な内膜肥厚形成悪化が確認された。したがって、カテプシンKはGFxの発現と深く関与し、GFxを介する平滑筋細胞死-増殖を制御することは、障害による血管リモデリングと血管内治療による再狭窄を制圧するにあたり極めて重要であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り実験を行い、結果が得られた。特許申請を進めている理由で、現段階では、名前とすべての結果を公表することを控えます。申請が終了した後、研究成果を即時に開示致します。
本研究課題の今後の進行方策:1. GFx中和抗体とその遺伝子導入法を用い、GFxが血管リモデリングや再狭窄制御の新たな分子ターゲットになりうるか多面的方向で検討を行うとともに、その詳細な機序を解明する。2. 名古屋大学循環器内科と共同で行う臨床研究を介して、血管障害とステント治療後の予後の新規バイオマーカーになりうるかを検討する。3. すべての結果をまとめ、学会発表と論文発表を行う。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
International Journal of Cardiology.
巻: 183 ページ: 198-208
10.1016/j.ijcard.2015.01.058.