研究課題
1)前年度行ったヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)培養系に全長CCN2とCCN2の4つの個別モジュールを添加して、その増殖と管腔形成に対する影響を確認する実験を行った。その結果、昨年度の顕微鏡観察での結果とは異なり、TetraColor Oneで定量的に測定した結果、いずれのモジュールも増殖促進効果を有しており、特にVWCとTSP1モジュールでその作用が強いこと、4つの個別モジュールのmixtureで全長CCN2の活性を再現できることが判明した。また、in vitro管腔形成については、画像解析によりjunctionの数を定量したところ、いずれのモジュールも管腔形成促進効果を有しており、特にIGFBP,VWCおよびCTモジュールが、活性が強いことが明らかとなった。またHUVECのmonolayerの一部を剥がして、そこへの細胞遊走能を画像解析により定量したところ、TSP1とCTモジュールが特に活性が強く全長CCN2の作用を上回ることが判明した。2)全長CCN2とCCN2の4つの個別モジュールの血管新生活性を、鶏卵漿尿膜(CAM)を使って測定したところ、全長CCN2と同様に4つの個別モジュールすべてに活性が認められ、特にTSP1とVWCが強くCTは全長CCN2より弱かった。3)軟骨欠損修復実験においてIGFBPモジュールにHB-EGFのHBドメインを結合させて徐放性を付与する実験を当初計画していたが、血管新生実験の結果、IGFBPがHUVECによる管腔形成促進効果が強いこと、gelatin hydorogel結合性(徐放性)を有するTSP1モジュールがin vivo軟骨欠損修復作用だけでなく、HUVEC増殖促進作用、CAMアッセイによる血管新生作用も強いことなど、これらの結果を踏まえ両モジュール2つを連結した組換え体タンパク質を、次年度実験に供するために調製した。
2: おおむね順調に進展している
(1) 初年度の7ヶ月間で得られたデータはpreliminaryなものだったので、再確認する実験を行い、血管新生に関するデータとして、血管内皮細胞のin vitroにおける遊走、増殖、管腔形成に対する個別モジュールの作用の結果が出揃った。(2) また、昨年度の計画にあった、鶏卵漿尿膜を用いたin ovo angiogenesis実験の結果もほぼ出揃った。(3) ヘパリン結合性がないため、徐放性を付与することが必要なモジュールについては、ヘパリン結合性を有しgelatin hydrogelに結合するTSP1モジュールが多くの活性に寄与していることが判明したので、これと他の必要なモジュールとの結合体リコンビナントタンパクを調製することで、ある機能に特化したsuper active CCN2誘導体を作成出来る可能性が高まった。以上から、当初の計画に照らして、おおむね順調に進展していると言える。
(1)軟骨欠損修復活性の強いTSP1モジュールが、線維化促進作用も強く、血管新生作用も強いことから、TSP1モジュールは細胞外マトリックス合成に関与するモジュールであることが示唆される。IGFBPモジュールは軟骨細胞培養系ではプロテオグリカン合成を促進し、HUVECによる管腔形成促進効果も強いことから, in vitroではマトリックス合成作用は強いものの、in vivoではretentionに問題があるため活性が認められないだけで、適切なdrug deliver systemを選択すれば、in vivoでも効果があると考えられた。そこで、gelatin hydrogelに結合してslow releaseされ、活性の強いTSP1モジュールとIGFBPモジュールを結合させれば、super active CCN2誘導体が得られるのではないかと考え、昨年度IGFBP-TSP1モジュールの連結CCN2誘導体リコンビナントタンパクを大量調製したので、これを用いてsuper cartilage regeneration作用があるかどうか調べる。なお、血管新生も強いことから軟骨内への血管侵入が起こらないかどうか注意して観察する。(2)IGFBP-TSP1モジュールはsuper angiogenesis factorである可能性もありこの点も検討する。(3)VWCは主に増殖促進作用を有し、CTは以前の我々の報告から接着・遊走活性の源と考えられることから、これらの点も各種細胞を用いて確認し、CCN2はモジュール毎で異なる活性を有するタンパク質であることを証明する。
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