研究実績の概要 |
妊娠期におけるウイルス感染は、生まれてきた子供の精神病の発症リスクを高めることが知られている。実験動物モデルとして、妊娠期にPolyICという化合物を投与すると、生まれた仔マウスが成熟した時点で、統合失調症と類似した症状を引き起こすことを既に報告している。一方、脳由来神経栄養因子およびその受容体であるTrkBシグナルは、精神疾患の病態に深く関わっていることが判っている。 今回、この動物モデルを用いて、TrkB作動薬である7,8-dihydroxyflavone (7,8-DHF)が精神病の発症を予防できるかを検討した。生後4週から8週間までの間に、溶媒、あるいは7,8-DHFを含む飲料水を与えた後、2週間、通常の水を与えて飼育した後、行動評価を行った。自発運動量は、すべての群で変わらなかった。PolyICを投与した母マウスから生まれた仔マウスは、認知機能障害、プレパルス抑制障害、覚せい剤投与による運動量亢進などの行動異常が観察されたが、7,8-DHFを含む飲料水を飲ませた群は、コントロール群と同様であった。これらの知見は、思春期におけるTrkB作動薬である7,8-DHFの投与が、成熟期における精神病発症を予防できる可能性を示唆した。
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