研究実績の概要 |
統合失調症の発症メカニズムとして、妊娠期における炎症が関わっていることが判ってきた。例えば、妊娠期におけるウイルス感染は、生まれてきた子供の精神疾患の発症リスクを高めることが知られている。実験動物としては、妊娠期にPolyICとういう化合物を投与すると、生まれてきた仔マウスが成熟した時点で、統合失調症と類似した行動異常を引き起こす。一方、脳由来神経栄養因子(BDNF)およびその受容体であるTrkBを介するシグナル系は、多くの精神神経疾患の病態に関わっている。 本研究の成果は、TrkB作動薬である7,8-dihydroxyflavone (7,8-DHF)を離乳後から8週間まで飲料水として与えたところ、PolyIC投与により、成熟期における行動異常(認知機能障害、プレパルス抑制障害)が起こらないことを見出した。さらに、PolyIC投与による、成熟マウスの前頭皮質におけるパルブアルブミン陽性細胞の低下についても、予防できることを見出した。 これらの結果は、思春期における7,8-DHFの投与が、成熟期における精神疾患の発症を予防できる可能性を示唆した。
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