東北大学東北メディカル・メガバンク機構の脳画像データベースを用いて、今年度は約2000人の脳画像データ、認知力、ストレスレベル、生活習慣等のデータ収集を行った。これらのデータを用いて、心的外傷後ストレス障害(PTSD)等のストレスレベルが脳形態、認知力にどの程度影響するかを解析した。具体的には、重度の震災被害によるストレスにより、どの程度海馬を主体とする脳萎縮に影響を与えるか、またそれが年齢、性別、ストレスレベルによりどのように萎縮の程度が変わるかを解析した。その結果、震災時、沿岸部に居住しており、ストレスレベルの高い、かつ男性ほど、海馬の体積が萎縮していることが明らかになった。これらの結果は、ストレスレベルが高い程、海馬体積が萎縮するという、これまでの研究結果に一致した結果であるが、それだけでは無く、そこには性差がある可能性が示唆された。特に男性においてストレスと海馬体積に有意な相関が見られたことに関して、このような性差が何故見られたかは明らかでは無いが、可能性としては、男性の方が社会性が低いために、地域のコミュニティを築きにくいこと、それがストレス軽減につながらないことにより、海馬体積がより萎縮した可能性が考えられる。併せて、コミュニティを築きにくいことが外出頻度を減らし、それが運動による海馬の神経新生を抑えた可能性も考えられる。大災害後の認知症や鬱のリスクを評価する際に、性差は大変重要である可能性が示唆された。これらの結果を学術誌などに発表する予定である。
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