研究課題/領域番号 |
14F04755
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研究機関 | 独立行政法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
WISSUWA Matthias 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 主任研究員 (90442722)
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研究分担者 |
PUJOL Vincent 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / イネのリン吸収 / 遺伝子同定 / リン獲得効率 |
研究実績の概要 |
リンは植物において重要な栄養素の一つであり、植物に必要なリンは施肥により供給される。しかし、施肥されたリンは、土壌に素早く固定され植物体が吸収できなくなり、大量の肥料が必要になることから、環境面や農家の経営においても負に影響する。よって、植物体のリンの効果的な利用効率に関する研究が必要がある。土壌微生物は、土壌中のリンを可溶化し、植物が利用・吸収する事を可能にする。この研究では、イネのリン吸収における微生物の関与を明らかにすると共に、リン吸収の向上に寄与する主要な微生物を同定し、リン吸収に関与する微生物の遺伝子同定を行うことを目的とする。 根のリン獲得効率が異なるイネ品種について、イネのリン吸収への微生物の関与を評価した。実験には、同研究室で近年同定された高いリン吸収を示し、かつ相対的に小さな根系を持つというイネ品種を用いた。これらのイネ品種の持つ高い根のリン獲得効率は、微生物との相互作用を伴う可能性があり、特定のメカニズムの存在が予想されたからである。 様々なイネ品種を使い、根の吸収効率に関する研究をポット試験により行った。また様々なリン肥料を使用し、イネのリン吸収量と根のサイズとの関係についての比較を行った。この研究の目的は、根の高いリン吸収効率を持っているイネ品種は、リンの可溶化の能力をもつ微生物との相互作用の関与を予想したが、今年度のポット試験では、根のリン吸収効率はすべての調査したイネ品種間で同程度で、リン吸収効率の差は見られなかった。これらのイネ品種を用いた圃場試験では、根のリン吸収効率に差が生じることがすでに知られていたが、圃場試験と違いポット試験では、根の伸長が制限され根系に影響する理由で、イネ品種間の根のリン吸収効率に変化が無いことが考えられた。今回の結果から、この研究のためにはポット試験ではなく圃場での試験が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、イネのリン吸収と土壌微生物との相互作用を明らかにすることであり、根のリン吸収効率が異なるイネ品種について、リン酸吸収と微生物の関与を評価するため、ポット試験により行った。しかし、ポット試験での評価では、根の成長が制限される事から、イネ品種間でのリン吸収効率の差は見られなかった。よって、実験系の変更が必要になり、ポット試験ではなく、実際の圃場での栽培試験が必要になった。次年度は、圃場で育種したイネ品種のサンプルを用いて,リン吸収効率や根圏微生物の相互関係を評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
根のリン吸収効率と微生物の寄与に関する関係を明らかにするために、低リンまたは高リン圃場での圃場試験により、さまざまなイネ品種を使って調査する。 低リンまたは高リン圃場で、異なった生育ステージで経時的にサンプリングを行い、植物体のバイオマスと同様に植物体のリン吸収量や根圏のリン濃度・土壌中の利用可能なリン濃度を測定し、根および根圏微生物の多様性評価を行う。 また、リン吸収の向上に寄与する特異的な微生物集団を同定するため、根および根圏 における微生物多様性を操作的分類単位(OTU)での評価を行う。OUTの解析は、rDNAのターゲットアンプリコン配列決定や454パイロシーケンシング技術を使用い た内部転写スペーサー(ITS)により行い、これらのOTUとリン吸収との相関を分析する。
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