研究課題/領域番号 |
14F04763
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩原 理加 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (30237911)
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研究分担者 |
VERYASOV GLEB 京都大学, エネルギー科学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶構造 / 電解質 / 柔粘性結晶 / 柔粘性イオン結晶 / 固体電解質 / フルオロアルミネート / アンモニウム |
研究実績の概要 |
柔粘性結晶は固体と液体の間に見られる中間相の一つであり、その構成分子は三次元的に回転していることから、あたかも等方的な分子のように振舞う。近年では分子性の柔粘性結晶だけでなく、イオンのみからなる柔粘性イオン結晶が広く研究され始めている。柔粘性イオン結晶は対称性の高いカチオンと様々なアニオンを組み合わせることで、岩塩型のような単純な結晶構造を持ち、イオン伝導性を有することから次世代固体電解質として注目を集めている。 H27年度は前年度から引き続き大きな有機カチオンであるアダマンチルアンモニウムカチオンと様々なフッ素系アニオンと組み合わせた柔粘性イオン結晶をイオン交換法によって合成し、その構造的、熱的性質を分光法や示差走査熱量分析によって調べるとともに、X線回折を用いた構造解析を行った。決定された結晶構造の中には乱れた構造を持つものもあり、柔粘性イオン結晶としての可能性が示唆された。またアミド系アニオンを用いた場合、比較的高いイオン伝導率を示す柔粘性結晶相が見つかり、今後リチウムイオン伝導性の測定などへと発展させる予定である。前年度その結晶構造が決定されたペンタフルオロアルミネートアニオンについては、さらに詳細な構造的特徴を計算化学的手法によって得ることで、配位子最密充填モデルに対する新しい知見を定量的に加えるに至った。また、柔粘性イオン結晶のマグネシウム二次電池用新規固体電解質としての応用を検討する中で、マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミド塩のアセトニトリル錯体について、その結晶構造を決定することで、マグネシウムがアセトニトリルに八面体型にホモレプティック6配位されているという配位構造を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに目的物質の合成とキャラクタリゼーションが進んでおり、興味深い物性も得られている。また、様々なフッ素系アニオンを含む柔粘性イオン結晶や関連するエネルギー変換デバイスへ研究を発展させており、十分な進捗がみられるため。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度はH26年度、27年度に得られたフッ素系アニオンを含む柔粘性イオン結晶の構造変化を、示差走査熱量分析の結果に基づいて温度制御機能付きX線回折装置を用いて行う。ここでは室温以下の相から100℃までの範囲で、相転移前後での構造変化に注目して、指数付を行うことで相変化を調べることとする。また単結晶X線回折による構造決定がこれまでに行われていない相については、温度変化、溶媒の種類、塩濃度などのパラメータを変化させることで結晶成長法の最適化を行い、単結晶を作成することで、構造を決定する。高いイオン伝導性を示すことがわかった相については、さらにリチウム塩を添加することでリチウム二次電池用電解質としての応用を探索する。ここではよく混合した柔粘性イオン結晶相を発現する塩をペレット化し、交流インピーダンス法でイオン伝導率を測定する。以上の結果得られた構造解析の結果とイオン伝導性から結晶構造とイオン伝導性の関係について考察を加える。前年度進展のあったマグネシウム系電解質についてもマグネシウムの配位構造に各種溶媒が及ぼす影響を調べ、その構造形成メカニズムを解明するとともに、柔粘性イオン結晶相におけるマグネシウムイオン伝導性についても検討する。平成28年度は最終年度であるため、成果の研究発表を関連学会で行うとともに、国際誌に論文として投稿し、世界に向けて情報発信を行う。
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