研究課題
比較文学に文芸社会学的視点を加味したアプローチによって、日本語文学が「世界文学」の文脈のなかで果たしつつある(そして果たしうる)機能を、イタリア語圏文学における翻訳出版を通してみる受容の様態に着目することで明らかにすべくしようとする、これまで未着手の研究が大きな意義を有することになる。まず研究主題に関する理論的背景を渉猟することから始めて、最新の理論的枠組みを措定した。国内の諸機関に赴かせ参考文献の収集にあたらせるとともに、適宜、イタリアでの資料収集に派遣した。日本語・イタリア語・英語圏における三様の学問背景を有する多様かつ豊富な方法論的アプローチが可能になった。つまり、日伊文学作品のグロバリゼーションと流通に関する越境的かつ普遍的反復モデルを同定することが可能になった。以後も適宜、最新の参考文献と研究方法の更新を促した。併せて「世界文学」の理論と研究に携わる多数の国内研究者に紹介を行うことで、進行中の研究の主体的な反省と見直しを示唆した。日伊文学作品の受容・流通・拡販をめぐる力学に関する理論的背景を明確に把握するに至り、次いで、日伊双方における文学作品の翻訳と出版の詳細な分析に移った後、この力学作用に関する包括的なスキームを完成させた。以降は、より実践的な作業へと研究は移行し、国内の大手出版社の文学編集者や国際ライツ事業部スタッフ等とのインタビューの準備に着手した。インタビューの目的は、版権取得過程における実践的手続き全般にわたる知見の獲得をとおして、市場流通のメカニズムの実態を確認することにあった。次いで、イタリアの主要出版社(Feltrinelli、Einaudi、Il Saggiatore、Neri Pozza)の編集者、さらには現代文学の日英翻訳者、文芸批評家などにもインタビューを行わせた。研究成果の一部は、第2回東アジア翻訳研究学会等、国際会議で発表させた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Estetica. Studi e Ricerche 2/2016, Bologna, Il Mulino, 2016
巻: - ページ: 367-384
声をさがしづづけて―和田忠彦先生退任記念論文集In continua ricerca di voci. Saggi in onore del Professor Tadahiko Wada, Kyoto, Eimei
巻: - ページ: 85-91
Stauffenberg
巻: - ページ: 215-222