我々は、線維芽細胞や血管内皮細胞などの非免疫細胞に存在するケモカイン・IL-6の過剰産生機構である「炎症回路」を発見して解析を続け、最近では炎症回路が局所の感覚神経-交感神経の興奮によって過剰に活性化されることを証明した。また、定常状態のマウスでは重力に伴う神経活性化によって、第5腰髄背側血管での炎症回路が過剰に働くことが分かり、さらに、血中に中枢神経系抗原を認識する自己反応生T細胞が存在する場合には、この部位から中枢神経系に侵入して炎症が慢性化し、多発性硬化症に似た病態を形成することが判明した。この局所感覚神経-交感神経の活性化による血管機能変化をゲートウェイ反射と呼んでいる。本研究では、研究が進んでいる多発性硬化症モデル(EAE)に加え、ベーチェット病モデルである実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を新たに利用してこれらの知見をさらに詳細に解析し、自己免疫疾患発症時における神経刺激の役割について明らかにすることを目的とした。EAUでは免疫後10日目からCD4 T細胞を初めとして免疫細胞の網膜への浸潤が認められた。この時期にマウスを暗所から明所へ飼育場所を移動させると、炎症性メディエーターであるインターロイキン6やケモカインの発現や網膜病態の臨床スコアも含め、網膜炎症の状態が変化することを見出した。このことは光の強度が網膜炎症に影響を及ぼすことを示唆しており、光ゲートウェイ反射の存在を示唆している。また、網膜炎症に対する新たな治療法に結びつく可能性が考えられる。これらの結果は学会等で発表し、また論文作製中である。
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