研究課題
既知および仮想的な化合物半導体について,電子物性と変換効率に関する高精度かつ系統的なシミュレーションを行い,太陽電池のための新しいヘテロ接合を提案することを目指して研究を遂行した.具体的な研究方針・手法は次の通りである.1.第一原理計算による一連の物理量算出プロセスを自動化することにより,候補物質群について網羅的な物性評価を効率的に行う.得られた電子構造および光吸収係数に基づいて,エネルギー変換効率のシミュレーションを行う.これにより,変換効率を吸収層厚さの関数として系統的に算出し,その結果を参考に新規光吸収層材料の候補を決定する.2.候補物質の熱力学的安定性および格子振動に対する動的安定性を調べる.3.絞り込まれた候補について,さらに点欠陥形成とそれに伴うキャリア生成,ドーピング可能性を検討し,光吸収層材料としての性能を多角的に評価する.また,他の物質との界面におけるバンドオフセットの計算を行い,太陽電池ヘテロ接合として高いポテンシャルを有する系を選定する.本年度は,第一原理計算に基づいたスクリーニングによる候補物質の選定と構造探索および安定性の評価を自動実行するためのプログラム開発を行った.まず結晶構造データベースにまとめられている多様な結晶構造をプロトタイプとして選定し,その構成元素を様々な元素で置換した仮想的な物質について網羅的な第一原理計算を自動で行う手法を開発した.一方で,遺伝的アルゴリズムにより安定構造を予測し,必要に応じて結晶構造を更新することで,最安定構造の予測精度を向上した.この手法を三元系窒化物半導体に応用し,様々な新物質を予測した.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度はスクリーニングのためのプログラム開発に注力したが,このプログラムの予備的実行によって,三元系窒化物半導体に関する新物質探索の具体的な成果が得られた.これによって今後,探索空間を拡張し,より多様な新物質の探索を行うための指針が定められた.
引き続き,第一原理計算に基づいたスクリーニングによる候補物質の選定と構造探索および安定性の評価のためのプログラム開発と応用を行う.とくに探索空間を広げたスクリーニングを効率的に実行するための手法を改善し,応用することで,より多様な新物質の探索を目指す.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
J. Mater. Chem. A
巻: 4 ページ: 1312-1318
10.1039/C5TA08214E