研究課題/領域番号 |
14F04808
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
櫻井 博儀 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 主任研究員 (70251395)
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研究分担者 |
KISS GABOR 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2018-03-31
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キーワード | 不安定化核の構造 / r-過程 / ベータ遅発中性子放出確率 / He-3検出器 |
研究実績の概要 |
本研究は、中性子過剰核のベータ遅発中性子放出確率の測定を通し、鉄からウランに至る元素合成過程「r-過程」の研究を行っている。r-過程は、超新星爆発や中性子星衝突過程などの爆発的天体現象で生じた高中性子密度環境下で起こる元素合成過程であり、中性子捕獲とベータ崩壊を繰り返しながら、重い元素が作られていく。r-過程に関わる中性子過剰核の性質はほとんど未知であり、質量や半減期といった諸性質を測定することが求められている。本研究では、元素反応経路を議論する際に重要となる、ベータ遅発中性子放出確率(Pn)に着目している。Pnの大小により、崩壊後の核種が変化し、またベータ崩壊による中性子供給量にも大きな影響をあたえる。Pnの測定は、理化学研究所・重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」でr-過程核を生成し、PnはHe-3検出器利用して測定する。この研究は国際共同研究「BRIKEN」のもとで実施されている。 Kiss氏はBRIKENコラボレーションの主要な人材として先導的役割を担っている。平成26年度から引き続き、各国共同研究機関から持ち込まれたHe-3検出器の単体のテストなどを行っている。平成26年度と同様の①から④の活動に加えて、下記の⑤⑥も行っている。 ①検出器個々のゲインやノイズレベルを調べ、ノイズ除去の閾値を決定した。②中性子減速材(パラフィン)にHe-3を装填するが、全体の検出効率が設計通りか独立にシミュレーションを行い、確認した。③RIビーム分離生成装置のシミュレーションを行い、RIビームの純度、強度などが最適となる設定を探索した。④国内外の研究者との打ち合わせを頻繁に行い、コラボレーションの起点となる働きをしている。さらに、⑤3He検出器内部に追加するベータ線検出装置の設置に関して英国グループと理研と調整を行っている。 ⑥中性子線源を利用した中性子検出効率の補正に向けた作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3He検出器を導入した遅発中性子検出を実現させるために以下の項目の検証を行った。①崩壊測定環境における中性子放出確率を求める際には、実験現場における中性子バックグラウンドを最小限に抑える必要がある。ウランビームを利用した中性子過剰核実験において、上流からの中性子バックグラウンドを低減する必要性があることが判った。そこで、米国・オークリッジ研究所と共同で中性子遮蔽用のシールドを取り寄せることにした。②既存のビームライン検出器に加え、新たに中性子検出器、ベータ線検出器、ガンマ線検出器を同期させたデータ収集系の構築が必要となる。そこで、タイムスタンプを各回路に導入し、加速器からのビームを利用したテスト実験を行い、最終的にデータを同期させることに成功した。新たに導入するベータ線検出器AIDAの動作テストを行うために毎秒、1kHzのビームを入射させた実験を行った結果、ベータ崩壊の測定が実現できることを確認した。 ③米国・オークリッジ研究所から60本の中性子検出器輸入を完了した。また、3He検出器用の電源装置の動作テストを行った。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究相手機関であるスペインとドイツ、ロシアの研究機関から さらに必要な3He検出器100本を輸入する必要がある。まず、スペインから数本をテスト的に輸入し 残りの検出器もスペイン経由で輸入する。中性子検出効率とガンマ線検出を最適化した設計を完了させる。3He検出器を取り囲むポリエチレン・ブロックを英国経由で発注しており、設計に沿った加工を行う。また、中性子検出器をサポートする架台の設計を進めている。スペインと共同で希土類元素領域を起源とする中性子過剰な原子核の遅発中性子測定実験の提案を行う。2016年4月の実験に向けて、実験準備を行う。
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