研究課題/領域番号 |
14F04908
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内山 真伸 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00271916)
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研究分担者 |
WANG CHAO 東京大学, 薬学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 有機金属化学 / 元素化学 / 理論化学 / クロスカップリング反応 / 遷移金属 / スズリチウム / 超価元素化合物 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、合成方法の開発、機能性分子/試薬の創製、または分子構造/反応機構の解析を目指し、今年度は幾つかの成果を達成したので、以下に報告する。 1. スタニルリチウムの新反応の開発と有機合成への応用:本研究では昨年度開発した高効率なスタニルリチウムの新合成法(特願 2015-44297)を利用し、スタニルリチウムと種々の基質の反応を調べた。全ての反応が順調に、高選択性、高収率で進行し、100% のスズ転化効率を達成した。本研究成果の一部は J. Am. Chem. Soc. 誌に掲載され、SYNFORM 誌や Chem-Station などの学術誌/メディアに紹介された。 2. ニッケル触媒を用いるエーテル系炭素―酸素結合の切断反応の理論解析:本研究では理論/計算科学手法を活用し、エーテル系炭素―酸素結合の切断を経由する熊田―玉尾反応のメカニズムを解明した。従来のクロスカップリング反応と異なり、本反応経路はニッケル (0) アート錯体中間体を介して、合理的な活性化エネルギーを示し、実験結果とよく合致していた。また、炭素―酸素結合を切断する際に、ニッケルとパラジウム触媒の活性差異も明らかにした。本研究成果の一部は Chem. Eur. J. 誌に掲載された。 3. テルペン類の生合成経路の理論解析:本研究では理論計算と実験化学を組み合わせて、テルペン合成酵素内部でのユニークな環化反応の全貌を明らかにした。テルペン類は、炭素5個からなるイソプレンを構成単位とし、カチオンが生じることが引き金となり、複雑な環化生成物を効率よく合成することが知られている。本研究成果の一部は Sci. Rep. 誌に掲載され、Chem-Station に紹介された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
27年度に予定していた研究内容は新反応と応用の開発または反応機構の解明に集中していた。その為に、昨年度は1)スタニルリチウムの新反応の開発と有機合成への応用、2)ニッケル触媒を用いるエーテル系炭素―酸素結合の切断反応の理論解析、3)テルペン類の生合成経路の理論解析の三つの成果を達成し、主要国際学術誌に三報(J. Am. Chem. Soc.、Chem. Eur. J.、Sci. Rep.)報告し、これらの多様な結果は学術誌/メディアに重点的に紹介された。昨年度の計画に基づいて、現在までの研究は予想以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究は、昨年度に引き続き、新反応/新分子の開発及び応用と機構解明を継続する予定で、詳細は以下の通りである。 まずは、反応の開発と合成への応用について、昨年度開発したスタンニルリチウムの新合成法を利用して、生物活性分子/医薬品の合成に挑む。そして、この反応/方法に基づいて、他の14/15 族元素-リチウム化合物の高効率な合成法の開発と応用、ならびに反応活性中間体の結晶構造解析や分光学的解析を行うことも視野に入れている。 2番目としては、現在幅広く使用される石油製品の代わりに、自然に豊富に存在するフェノール、アルコール誘導体(C-O基質)を反応原料とする新型合成方法の開発を試みる。昨年度ではニッケル触媒を用いるエーテル系炭素―酸素結合の切断反応のメカニズムを解明した。今年度は、理論/計算化学と実験方法を併用し、これらの C-O 基質に対して、直接転換反応の開拓、そして将来的には医薬品や機能材料合成の終盤に於ける誘導体化法の確立に挑む。また、同様に自然に豊富に存在するアミン類(C-N 基質)を使う新反応の開発と応用への研究も予定している。
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