研究課題
平成27年度の研究においても,引き続きさまざまな材料より薬剤耐性菌を分離し,薬剤耐性菌と耐性遺伝子の解析を行った。広島県内の小売店で購入した有機栽培(21種),非有機栽培(27種)の野菜や果物から198株のグラム陰性細菌を単離した。PCR法による薬剤耐性遺伝子スクリーニングの結果,クラス1インテグロン,β-ラクタマーゼ遺伝子(blaTEM,blaSHV,blaCTX-M),プラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnrB,qnrS,aac(6')-Ib-cr)が検出された。特に,blaCTX-Mは基質拡張型β-ラクタマーゼ遺伝子として知られており,この遺伝子を保有する株は多剤耐性株であった。野菜からこのような耐性菌が検出されたことは,食品衛生学上重要な意味がある。また,エジプトとの共同研究も積極的に進めており,エジプトで分離された薬剤耐性菌の解析を行った。コリスチンは多剤耐性菌に対抗する最後の砦として知られる抗生物質であるが,2016年にmcr-1と呼ばれるプラスミド性のコリスチン耐性遺伝子が初めて報告された。エジプトの分離株を解析したところ,ヒト臨床株1株と乳房炎に罹患したウシより1株がmcr-1遺伝子を保有していることを明らかにした。これらはエジプトにおけるmcr-1遺伝子の最初の報告となった。また,近年β-ラクタム剤の一種であるカルバペネムに耐性を示すβ-ラクタマーゼ(カルバペネマーゼ)を保有する薬剤耐性菌が大きな問題となっている。エジプトの分離株を解析したところ,カルバペネマーゼの一種であるNDM-5を保有する大腸菌とNDM-4とNDM-5を保有する肺炎桿菌がそれぞれヒト臨床株より検出された。世界的なカルバペネマーゼの広がりがエジプトでも起こっていることが明らかとなった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Antimicrobial Agents and Chemotherapy
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