研究概要 |
本研究では,回折限界に近い軟X線レーザーの発生及びそれを用いた応用研究の展開を第一の目標としている。当研究グループでは上記の目標を達成するため,衝突励起型軟X線レーザーに縦励起方式を適用し,すでに回折限界に近い軟X線レーザー(波長18.9nm,ニッケル様モリブデン)の実証に成功している。そこで本研究課題の初年度では高空間コヒーレンス軟X線レーザーが発生するメカニズム及び条件の解明を主な目標にあげた。 以上の目標を速やかに達成するためには,繰り返しが数Hz以上の励起光源が不可欠である。そこで当研究室が所有する10mJ,100fsチタンサファィヤレーザーシステムに増幅部を追加し,縦励起軟X線レーザー実験に十分な300mJ出力を10Hz繰り返しで発生させることに今年度成功した。また,本軟X線レーザー方式では励起光のペデスタルが重要な役割を担っていると予測されるため,これを測定できる三次相関計を自作し,性能評価を行った。また後述するシミュレーション結果をふまえ,分光器装置,特にターゲット保持・駆動部の改良設計及び製作を行った。 シミュレーションでは従来から独自で開発してきたコードを用い,様々な条件下における縦励起軟X線レーザーの振る舞いを調べた。非常に大きな収穫だったのは,ターゲット表面に対する軟X線レーザービームの出射角度が予想以上に大きいという知見が新たに得られたことである(T. Ozaki et al.,PRL2002)。この結果から,実験で使用する分光器の前置光学系及びスリットの位置を精度よくアライメントしないと軟X線増幅が観測されないことが明らかとなった。また本軟方式の場合,プラズマ中における縦励起光と軟X線レーザー光の伝播速度の違いから,軟X線レーザーの超短パルス化が可能となる現象を発見しており,当該分野における新しい展開が期待される。
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