研究分担者 |
上野 啓司 埼玉大学, 理学部, 助教授 (40223482)
島田 敏宏 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (10262148)
青木 秀夫 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (50114351)
有田 亮太郎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (80332592)
木口 学 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (70313020)
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研究概要 |
高度に制御された有機無機ヘテロ界面を実現し,電界による電荷注入,界面相互作用における多体効果による新奇量子現象の発現を実現するため,実験グループは成長過程の制御,ゲート絶縁膜の探索に,また理論グループは金属/絶縁体界面電子状態と有機薄膜における強磁性に重点を置いた研究をおこなった.主な成果は以下のとおりである. (1)薄膜成長;原子間力顕微鏡探針を利用してあらかじめ描画したナノ構造上および傾斜基板上に存在するステップへのペンタセン,フラレンの薄膜成長過程を解明し,ナノスケールで位置を制御して有機薄膜を成長する手法を確立した.Cu、Agなどのfcc金属およびKBrなどのアルカリハライド基板上へのオリゴチオフェン分子の成長過程を電子線回折,X線吸収端微細構造(NEXAFS)を駆使して解明した. (2)ゲート絶縁膜;単結晶有機薄膜の成長を目指し,単結晶ゲート絶縁膜の作製条件の探索をおこない,Ag単結晶基板上へLiF薄膜の成長と絶縁特性,Si基板上へのCaF_2薄膜の成長と絶縁特性を解明し,絶縁膜への適用可能性を検証した.また,従来多用されているSiO_2,Al_2O_3に代わる高誘電性絶縁膜として陽極酸化法により作製したTa_2O_5膜を用いて有機薄膜電界効果トランジスタ(FET)を作製し,絶縁膜としての有用性を実証した. (3)有機薄膜の光重合;MoS_2、基板上へのC_<60>薄膜成長時に532nm, CWレーザー照射し,ラマン分光によってC_<60>の重合を確認した.超薄膜FET構造に電界を印加しながら光電子分光を測定すると,重合したC_<60>薄膜のスペクトルに近付き,電界+紫外光照射による高効率の重合が生起することを見い出した. (4)有機薄膜FET特性;予め用意した電極構造を持つ基板上にペンタセン,C_<60>,VOPcの薄膜成長をおこない,真空中でFET特性の評価をおこなった.ガス吸着による特性の変化を受けやすい有機薄膜の電気物性の精確な評価が可能になった.また,薄膜成長中の有機薄膜の電気特性のin-situ, real-timeの特性評価装置を製作した. (5)界面特性;元素選択性分析手法であるNEXAFS方を利用して,絶縁体/金属界面に特有な電子状態(MIGS)を制御された界面において初めて見い出した.このMIGS状態について第一原理計算によって調べた結果,半導体特有の現象と思われていたMIGSの存在が,ギャップの大きな絶縁体と金属の界面でも生ずること,MIGSの波動関数の性格などを明らかにした.MIGSは励起子機構による界面超伝導などの興味深い多体現象につながることも期待され,理論的考察を開始した. (6)有機強磁性理論;新奇な有機物強磁性発現の可能性を5員環高分子(ポリアミノ・トリアゾール)について第一原理計算により探索し,電荷移動や化学ドーピングによる電子密度の制御による遍歴強磁性の発現を実証した.
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