研究課題
本年度は有機物質界面の構造や電子構造について、諸手法により詳細な情報を得た。以下に列挙する。(1)関・金井・石井が開発した光電子収量分光法装置により、有機膜のイオン化エネルギーが真空中と大気中で大きく変化を示すこと、この分光法で有機/金属界面の正孔注入障壁が実測できることを世界で初めて示した。(2)上野は注意深い試料作成と高分解能光電子分光測定により、ペンタセン/黒鉛系で振動構造を観測し、正孔と分子内振動の結合の定量的情報や、基板上に配列した分子の双極子モーメント等の詳細な情報を得た。さらに、配向分子から特定方向に放出された光電子のエネルギー分布の高度な理論シミュレーションプログラムを開発した。(3)空準位についても、金井・関が高分解能逆光電子分光装置の設計製作を行い、データを得始めている。(4)石井は、独自に開発してきた変位電流測定により、界面をアルカン分子で修飾した有機薄膜トランジスター系で両性動作が可能になる機構を解明したほか、有機メモリー素子での分極ヒステリシスの発見、有機電界発光素子での発光劣化機構の解明なども行った。(5)森川は、代表的な有機EL発光材料Alq_3と金属の間の界面電気二重層の成因を理論計算で詳細に調べ、分子の永久双極子が向きを揃えて並ぶ可能性を示唆した。(6)大内・関・金井は、有機電子デバイスにも用いられるイオン液体の電子構造や表面における分子配向を紫外光電子分光法や赤外可視和周波発生分光で詳細に明らかにした。また、海外研究拠点との交流の一環として、スウェーデンの研究ネットワーク「先進分子性物質センター」と合同のワークショップをスウェーデンで開催して突っ込んだ討論を行い研究の進展を図った他、他資金による有機界面に関する国際ワークショップを名古屋大で開催した。
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