研究概要 |
(1)シロイヌナズナの内在転移因子CACTAは野生型では転写や転移が抑制されているが、DNA低メチル化突然変異ddm1(decrease in DNA methylation)やDNAメチル化酵素遺伝子の突然変異下で転写と転移が誘導される(Nature 411,212-214,Current Biology 73,421-426)。ddm1で活性化されたCACTAは、交配によって野生型に戻しても転移能を保持していることがわかった。転移因子の抑制に世代を越えて継承されるDNAメチル化が必要であると解釈される(Genetics 168,961-969)。 (2)自律型コピーCACTA1は、ddm1突然変異下では単独で転移できる。一方、内部に欠失のある非自律型コピーCACTA2は、ddm1突然変異下で、かつ、CACTA1の存在下でのみ転移できる。CACTA2は、CACTA1からトランスに供給される因子に依存して転移を行うためと考えられる。ddm1による転移活性化はトランスの効果のみなのか、あるいはシスに限定された効果もあるかを知るため、野生型由来の非自律型CACTA2の活性を、ddm1で活性化されたCACTA1の存在下で調べた。この条件下ではCACTA2の転移は誘導されず、シスに限定される効果の存在が示された(原稿準備中)。 (3)シロイヌナズナのクロマチン集合因子(CAF-1)の変異体で、染色体上の様々な領域に存在する遺伝視座のジーンサイレンシングの脱抑制が、低頻度かつ確率的に(stochastic)起こることを見いだした。この結果は、CAF-1の機能が阻害されると、個体内の細胞増殖過程における遺伝子発現情報の安定的な維持が阻害されるというモデルを指示する(原稿投稿中)。
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