研究課題
研究代表者が明らかにしてきたHOIL-1ユビキチンリガーゼ、および、鉄代謝異常と神経変性疾患の関連に関して以下の研究を行った。(1)HOIL-1ユビキチンリガーゼの機能解析a.HOIL-1リガーゼの機能発現メカニズム HOIL-1のアイソフォームであるHOIL-1LがHOIPと形成するLUBAC複合体を形成して機能することを明らかにした。ユビキチン修飾系は多くの場合、複数のユビキチンは連続して結合して生成するポリユビキチン鎖によって標的蛋白質の機能を制御する。これまでに報告されているポリユビキチン鎖はユビキチンのリジン側鎖を介する。驚いたことに、LUBACは従来想定されていたリジン残基を介したものではなく、これまでには想定されていなかったユビキチンのN末のユビキチン鎖を介した直鎖状ポリユビキチン鎖を形成するリガーゼであることを明らかにした(EMBO J.,2006)。b.HOIL-1リガーゼの生理的役割 LUBACの生理機能の解析を進め、LUBACがNF-κB刺激伝達系の分子の1つであるNEMOに直鎖状ポリユビキチンを付加することにより、選択的にNF-κBを活性化させることを明らかにした(投稿中)。(2)鉄代謝異常の神経変性疾患への関与鉄は生体に必須な微量元素であると同時に過剰量存在する場合にはフリーラジカルの産生源となり、酸化ストレスを引き起こす。種々の神経変性疾患において鉄代謝異常、酸化ストレスの病態形成への関与が報告されている。そこで、脳特異的IRP2 Tgマウスを作成し、鉄代謝異常による酸化ストレスの神経変性疾患への関与の解析を進めた。IRP2 Tgでは著明な鉄蓄積は認められなかったが、反応性に富んだFe^<2+>の蓄積による酸化ストレスの亢進が認められた。加齢Tgマウスでは神経細胞脱落、運動失調が観察され、神経変性疾患様症状を呈した(投稿中)。
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