研究課題
潰瘍性大腸炎モデルであるデキストラン硫酸塩を用いたマウス腸炎(DSS腸炎)モデルでは、抑制型免疫レセプターであるLMIR3/CD300fの欠損によりDSS腸炎が増悪するという新しい知見を得た。キメラマウスなどの解析により、マスト細胞表面に発現するLMIR3の欠損により腸炎が増悪することが分かった。さらに、LMIR3はマスト細胞表面に発現するATP受容体のP2X7受容体のシグナルを抑制し、腸炎を抑制、制御している。野生型マウスに比べ、LMIR3欠損マウスの腸管内ではDSS腸炎により好中球などの炎症細胞やマスト細胞の増加が認められた。LMIR3変異体を作成し、LMIR3欠損マウス由来の骨髄から骨髄由来マスト細胞(BMMC)を誘導する際にLMIR3変異体を強制発現させ、ITIMとITSMに含まれるチロシン残基のリン酸化がP2X7受容体のシグナルを抑制する際には重要であることを突き止めた。BMMCをATPで刺激することにより、BMMCの活性化や炎症性サイトカインなどが産生される。野生型やLMIR3欠損マウス由来のBMMCはどちらも同量のATPで刺激を加えると、サイトカインなどの産生量に相違は見られないが、LMIR3の生理的なリガンドである細胞外脂質のセラミドをプレートに固相化させた状態でATPの刺激を加えると、野生型マウス由来のBMMCでのみ、BMMCの活性化は抑制され、LMIR3欠損マウス由来のBMMCでは抑制が認められなかった。LMIR3とリガンドのセラミドの結合がATP受容体を介したマスト細胞の活性化を抑制していることが明らかになった。マウスの腸管を免疫染色し観察したところ、定常状態のマウス腸管内ではセラミドの発現が認められ、DSSを投与し腸管内に炎症が引き起こると、セラミドが増加することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
GVHDとLMIR3の関連において腸管内におけるLMIR3の役割が判明してきている。炎症性腸疾患において腸管マスト細胞とその表面に発現するP2X7受容体との関連が本研究において判明した。腸管マスト細胞とGVHDの関連は既報で報告があり、LMIR3とGVHDにおいてもマスト細胞を介した制御機構が存在する可能性が高いと考えられる。
腸管におけるLMIR3の役割が判明しつつあり、GVHDとの関連について検討を行う必要があると考える。さらに、白血病との関連については未だ検討が進んでいないため、白血病とLIR3との関連についても研究を進めていく必要があると考える。
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Gut
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10.1136/gutjnl-2014-308900.
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