研究課題/領域番号 |
14J00015
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
植松 圭吾 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 社会性昆虫 / 社会性アブラムシ / 表現型多型 / カースト分化 / 真社会性 / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本年度は日本・台湾に分布するワタムシ族のColophina属、および独立に社会性を進化させているツノアブラムシ族の数種についての調査・採集をおこなった。4月に台湾で行った調査で、これまで記載されていなかったオバケワタムシ(Colophina monstrifica)のゴールを作る1次宿主世代を発見し、捕食者導入実験の結果、攻撃行動を示すことが明らかになった。さらに、台湾・苗栗で見つかったボタンヅルワタムシと思われるゴール内の個体についてミトコンドリアDNAのCOI領域の塩基配列を読み、分子系統解析を行ったところ、日本のボタンヅルワタムシと形態は酷似しているものの遺伝的に分化した別種であることが示唆された。 採集したツノアブラムシ族・Colophina属のサンプルについてプレパラート標本を作製し、その後、脚・口吻などの形態形質について測定し、系統を考慮した種間比較を行った。その結果、Colophina属において1次宿主世代の1齢幼虫と2次宿主世代の不妊兵隊の間に相関進化パターンを検出した。 また、Colophina属のボタンヅルワタムシ・オバケワタムシ・台湾のボタンヅルワタムシの近縁種について、RNA-seq解析を行った。採集した1次宿主世代・2次宿主世代について、1次宿主世代は1齢幼虫・2齢幼虫・3齢または4齢の翅芽幼虫・無翅成虫から、2次宿主世代は兵隊1齢幼虫・普通1齢幼虫・3齢または4齢の翅芽幼虫・無翅成虫からtotalRNAを抽出し、cDNAライブラリーを調整し、基礎生物学研究所の次世代シーケンサー(illumina Hiseq 2000)によってcDNA配列の解析をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台湾での調査にてオバケワタムシの1次宿主世代を発見、およびボタンヅルワタムシに近縁な別種の存在を明らかにしたことで今後の遺伝子発現のデータ数が豊富になるため、研究の発展につながると考えられる。またColophina属の2種はまだ遺伝解析が進んでいないが、RNAサンプルの抽出を一部終えており、次年度以降の解析に向け準備が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
Colophina属の2種(クサボタンワタムシ・センニンソウワタムシ)の1次宿主世代および台湾のボタンヅルワタムシ近縁種について野外調査による採集・その後RNA抽出を行い、RNA-seqを行う。また、すでにRNA-seqにより遺伝子発現データを得ている種については、今後モルフ間・宿主世代間・種間での遺伝子発現の類似性・特異性、および遺伝子発現パターンの違いと分子進化速度との関係など、データの解析により明らかにする。外部形態の種間比較については、まだ形態データの解析が終了していないツノアブラムシ族について、データの追加後に系統種間比較を行う。
|