研究実績の概要 |
我々は、ビニルピリジンを有する亜鉛クロロフィル誘導体が、ピリジン部位の窒素とクロロフィル環中心の亜鉛間の分子間軸配位結合によって、二重らせん配位ポリマーを形成することを報告している (Y. Shinozaki et al. J. Am. Chem. Soc, 2013, 135, 5262)。この二重らせん配位ポリマー内では、2本のポリマーを行き来する励起エネルギー移動経路の効率が高く、光捕集アンテナとしての利用に興味が持たれる。 本研究が目的とする、クロロフィル配位ポリマーを用いた光捕集アンテナの創製のためには、効率の良いエネルギー移動経路を有する配位ポリマーを探索する必要があり、ポリマーの高次構造-分子構造の関係性を把握することを第一目的とした。 亜鉛クロロフィル誘導体の配位部位をビニルピリジンからオキサゾールへ変化させることによって、イス型のポリマーが形成されることが分かり ( Y. Shinocaki et al. Chem. Lett. 2014, 43, 862) 、分子間軸配位の結合軸に対するクロロフィル環の配向がポリマーの高次構造を決定する要因の一つと考えられた。そこで、位置異性体の関係にある4ピリジン (Zn4Py)または3ピリジン (Zn3Py)を有する亜鉛クロロフィル誘導体群を合成し、配位ポリマーを構築した (Y. Shinozak, et al, CrystaEngComm, 2014, 16, 9155)。Zn4Pyはイス型配位ポリマーを、Zn3Pyはらせん状配位ポリマーを形成することが分かり、配位部位を変化させることで、配位ポリマーの高次構造制御が可能であることを見出した。イス型よりも、らせん状のポリマー内の方が、効率の良いエネルギー移動が可能であることが計算上確かめられており、らせん状の配位ポリマーの捕集アンテナとしての有望性が示された。
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