研究課題
フィロウイルスの表面糖タンパク質GPを持つ水胞性口炎ウイルスシューフドタイプを(VSVP)用いた結果、ヤエヤマオオコウモリ由細胞FBKT1にはエボラウイルス(EBOV)のGPを持つVSVPは感染するが、マールブルグウイルス(MARV)のGPを持つVSVPは感染しないことが判明している。そこで実際のEBOVおよびMARVを用いても同様の結果が得られるかを検証するため米国のThe University of Texas Medical BranchのBSL4施設を訪れFBKT1を含む他のコウモリ由来細胞に対するフィロウイルスの感染実験を行った。EBOV5種およびMARV2株を用いた結果FBKT1にはEBOVは感染する一方で、MARVは感染しなかった。EBOVおよびMARVではVP24, VP35およびVP40がインターフェロン応答を阻害していることが報告されている。そこで新規フィロウイルスLloviu virus(LLOV)のVP40, VP35およびVP24が持つインターフェロン応答抑制機構の有無を調べた。過去にEBOVおよびMARVで報告のあるSTAT1のリン酸化、IRF-3/7の核内移行の抑制を評価したが有意な差は見られなかった。インドネシアでサンプリングされたブタの血清を用いてフィロウイルスに対する抗体保有状況をELISA法にて検査した。ELISAにはEBOVおよびMARVのGPに加え、LLOVのGPも新しく抗原とし用いた。インドネシアのサンプルに関しては抗体陽性個体はさらにNPを抗原としたELISAを行った。ザンビアでは、捕獲したフルーツコウモリからサンプリングした血清を用いたELISAによる抗体調査の結果、GPに対する抗体を保有すると考えられる個体が存在し、抗体価の高い個体に関してはwestern blot法により他のウイルス蛋白に対するの抗体保有状況も調査した。
2: おおむね順調に進展している
LLOVの持つインターフェロン抑制機構の解明については当初の実験計画に準じて進展していたが、用いた実験系において有意なデータは得られなかった。フィロウイルスのGPが認識するレセプターの比較および新規分子の検索について、当初の予定通りに米国でBSL4施設を用いEBOVおよびMARVの生ウイルスを用いて、日本で得られたデータの検証を行った。さらに新規分子の同定に向けてExpression cloningの系を立ち上げるために実験準備を進めており、おおむね実験計画通りに進展している。フィロウイルスの疫学調査はザンビアおよびインドネシアのサンプルの他、フィリピンやロシアからもサンプルを集めており、これからも継続していく。
LLOVのインターフェロン応答抑制機構についての実験は有意義なデータが得られなかった上、海外の他のグループが同様の実験結果を既に発表しており、今後もこのまま継続して行く価値が低いと考えられる。フィロウイルスのGPが認識するレセプターの比較および新規分子の検索についてはExpression cloningを主として新規分子の同定に向けて実験を継続していく。またFBKT1細胞対してEBOVおよびMARVのウイルス様粒子(VLP)を用いて吸着および侵入のどの段階がEBOVとMARVの感受性の違いに関与しているかを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察することで解析する予定である。フィロウイルスの血清疫学調査に関してはインドネシアおよびザンビアでは今後も継続して行っていく他、さらに血清疫学調査の精度を高めるため、サンプルを集め疫学調査を行う対象を広げていく予定である。さらにELISA抗原とするウイルス蛋白を複数用意する。
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Journal of Infectious Diseases
巻: jiv063 ページ: jiv063
10.1093/infdis/jiv063
Biochemical and biophysical research communications
巻: 455 ページ: 223-228
10.1016/j.bbrc.2014.10.144