当該年度ではまず、前年度に引き続きレーザーとプラズマの相互作用を記述する非線形シュレディンガー方程式系(以下NLS系)の適切性について調べた。前年度の研究では、非線形相互作用による共鳴が生じない(すなわち「非共鳴条件」が満たされる)場合に空間4次元以上でスケール臨界のソボレフ空間における適切性を得たが、当該年度ではBourgain-Demter(2015)による時空分散型評価を利用することでこの結果を空間3次元以上まで拡張した。また、空間5次元以上の場合には非共鳴条件が満たされない場合にもスケール臨界のソボレフ空間における適切性が得られることを示した。一方、空間4次元以下で非共鳴条件が満たされない場合には、ソボレフ指数が1よりも真に大きいソボレフ空間における適切性を得た。 次に、非共鳴条件が満たされない場合の全空間(2次元)上のNLS系の解の漸近挙動について調べた。非共鳴条件が満たされていない場合には非線形項に含まれる微分から生じる特異性の解消が難しく、思うように研究が進展しなかった。 最後に、前年度に引き続き4階非線形シュレディンガー方程式(以下4NLS)の適切性と解の漸近挙動について調べた。前年度の研究ではスケール臨界なソボレフ空間における4NLSの適切性についての結果を得たが、より広いソボレフ空間での適切性を得るために当該年度では確率化された初期値を扱った。Lurmann-Mendelson(2014)およびBenyi-Oh-Pocovnicu(2015)によるウィーナー分解を用いた確率化の方法を適用することで、微分を含む3次の非線形項をもつ4NLSが空間3次元以上でスケール臨界なソボレフ空間より広いソボレフ空間において、ほとんど確実に適切となり解が散乱することを得た。また、この手法を非共鳴条件を満たし非線形項に微分を含む非線形シュレディンガー方程式にも応用した。
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