研究実績の概要 |
当該年度は,境界付き多様体の剛性に関する研究を行った.リッチ曲率ならび境界の平均曲率が下に有界な境界付き多様体に対して,いくつかの剛性定理を得たので報告する. 研究計画の段階において,リッチ曲率および境界の平均曲率の下からの有界性の仮定のもと,境界付き多様体の境界の近傍に対する体積比比較定理を得ていた.その比較定理の等号成立条件について考察をし,境界の近傍の体積増大度に関する剛性定理を得た.また,加須栄氏,Croke-Kleiner両氏はそれぞれ独立に,コンパクトな境界を持つ境界付き多様体に対してある分裂定理を得ていた.境界がコンパクトとは限らない境界付き多様体に対して,ある分裂定理を示した.今回得られた結果をもって,今後の研究の基盤が出来上がったと言える. また,境界付き多様体上のpラプラシアンのディリクレ固有値に関する研究を行った.リッチ曲率および境界の平均曲率の下からの有界性,さらに内在半径の上からの有界性の仮定のもと,pレイリー商に対し,ある下からの評価を与えた.特に,コンパクトな境界付き多様体上のpラプラシアンのディリクレ最小固有値の下限を得た.さらに,先に述べた分裂定理を応用して,pレイリー商の下限に関する剛性定理を得た.加須栄氏によりコンパクトな境界付き多様体上のラプラシアンの最小固有値に関する剛性定理が得られていたが,今回得られた剛性定理はコンパクトとは限らない境界付き多様体に対する主張であることに注意する. 以上に述べた研究成果は,研究論文 Y. Sakurai, Rigidity of manifolds with boundary under a lower Ricci curvature bound, arXiv preprint arXiv:1404.3845v4 (2015), submitted. として査読付き学術雑誌に投稿中の状態にある.
|