突然変異株の微生物集団中での挙動を調べるために、突然変異株の細胞間コミュニケーション能力について調べた。昨年度までは、緑膿菌の細胞外多糖のアルギン酸を過剰生産するムコイド変異株が細胞間コミュニケーションをする際、緑膿菌の生産する複数のシグナル物質に対する応答性が全体的に低下し、さらに特定のシグナル物質に対する応答性ほとんどないことを発見した。また、アルギン酸生産がそのシグナル物質の応答のみを阻害していることが示された。そのことから、ムコイド変異株は集団中で異なる挙動を示す可能性があることを示唆すことができた。さらに、その詳しいメカニズムを解明するために、文献調査を行い、様々な関与する可能性のある因子について調べ、実験を行った。 今年度はさらに野生株と共存したときに、野生株からのシグナルに対する応答も同じ現象が見られるかについて調べ、その結果、1種類のシグナル物質以外シグナル物質添加時と同様な結果が得られた。また、ムコイド変異株は実験室で長期培養すると野生型に戻るリバータントが出現するが、そのリバータントのシグナル応答のパターンも野生型に戻ることを示すことができた。 最後に、ムコイド変異株のシグナル物質応答の成果をまとめ、Influence of the alginate production on cell-to-cell communication in Pseudomonas aeruginosa PAO1というタイトルでEnvironmental Microbiology Reportsに投稿し、受理された。
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