前年度までに、抗肥満効果に関して、CREB3L3は肝臓からFGF21を誘導・分泌させ、そのFGF21が皮下の白色脂肪組織に作用しUcp1の発現増加(褐色化)を促進させることにより酸素消費を亢進させ、体重増加を抑制させることを明らかにしている。 インスリン感受性の悪化抑制メカニズムに関しては、前年度に複数のマイクロアレイデータを統合した結果より、CREB3L3によって誘導される新たな分泌ホルモン(X)を見出している。そこで、本年度は、その分泌ホルモン(X)にフォーカスし3つの研究を行った。 1、マイクロアレイの結果を確認するために、CREB3L3の過剰発現及び、ノックアウトマウスなどの種々の肝臓サンプルを用いてXのmRNAレベルでの発現を検討すると、Xの発現は、CREB3L3の発現と相関していることが確認できた。さらに、Xは分泌ホルモンなので、蛋白レベルでの評価および、標的臓器でのレセプター以下のシグナルを検討した。 2、CREB3L3が直接Xの発現を誘導するのか、プロモーター解析を行った。ルシフェラーゼアッセイによりプロモーター領域を上流より削っていくデリーションアッセイを行うと、Xのプロモーター上には少なくとも2か所CREB3L3が作用する領域があることが明らかとなった。また、その2か所に関してEMSAを行うと、CREB3L3は直接結合することが明らかとなった。さらに、マウス肝臓サンプルを用いたChIPアッセイより、肝臓組織においてもCREB3L3はXのプロモーターに結合していることを明らかにした。 3、CREB3L3によるインスリン感受性の悪化抑制にXが関与するのかどうか検討するために、Xのノックダウンアデノウイルスを作製し、CREB3L3トランスジェニックマウスに投与し、その効果を検討している。
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