研究課題/領域番号 |
14J00101
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
直川 耕祐 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 特異点 / メビウスの帯 / 等長変形 / 半正定値計量 / 結び目 / 可展面 / カスプ辺 / ホイットニーの傘 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,曲面に現れる特異点やトポロジーに関する研究を行い,微分幾何的な視点からその性質を明らかにすることを目的としている.この目的に従い,本年度は以下の研究成果を得た. (1)筆者の以前の研究で「3次元空間型(単連結な定曲率空間)M^3内に勝手に与えられた実解析的な結び目に沿う,可展的な閉じた帯のイソトピー型の存在・非存在に対する必要十分条件」を与えたが,本研究では,外の空間M^3が単連結でない場合を含む任意の定曲率空間に対して,この結果を一般化した.実解析的な結び目γの管状近傍Ωが向き付け可能な場合は,以前の研究の自然な一般化として,「γに対して,ある捻り数の限界の値が存在し,その値よりも大きな捻り数のものは存在するが,それ以下のものは存在しない」というタイプの主張を示したが,Ωが向き付け不可能な場合は,そのような限界が存在せず,任意の捻り数を許容するという結果を得た. (2)カスプ辺の特異曲線の接触平面が単位法線ベクトルと直交しないとき,ジェネリックなカスプ辺という.3次元ユークリッド空間R^3において,任意に与えられた実解析的かつジェネリックなカスプ辺に対し,非自明な等長変形(第一基本形式を保つ曲面の変形)が存在することを示した(梅原雅顕氏,山田光太郎氏との共同研究). (3)2次元多様体上に,コソフスキー計量およびホイットニー計量と呼ばれる半正定値計量のクラスを導入し,写像の特異点の内的定式化を行った.前者は,R^3のカスプ辺や燕の尾の誘導計量を含む半正定値計量のクラスで,後者は,ホイットニーの傘の誘導計量を含む半正定値計量のクラスである.さらに,コソフスキー計量またはホイットニー計量のそれぞれの半正定値計量をもつコンパクトな2次元多様体に対し,ガウス-ボンネ型の公式が成り立つことを示した(長谷川氏,本田氏,佐治氏,梅原氏,山田氏との共同研究).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
与えられた結び目に沿う可展的な閉じた帯のトポロジーに関する研究では,外の空間が任意の定曲率空間の場合に,一般化された形で結果を得ることができた.当初の研究計画の通り,以前よりの継続課題として期待していた研究成果である.また,特異点の研究では,ジェネリックなカスプ辺の非自明な等長変形の存在を示しただけでなく,ある種の特異点の内的定式化にも成功した.これは,当初の研究計画時点では考えられなかった新しい研究成果である.以上を総合的に鑑みれば,本研究課題の当初研究目的は,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
写像の特異点の内的定式化や等長変形に関して,進展が期待できるため,重点的に推進する予定である.また,本研究課題の一つである,特異点付きの曲面の離散化と可視化の研究について,2月より7月までウィーン工科大学に滞在し, Udo Hertrich-Jeromin 氏と研究連絡および議論・討論を行っているところである.当初計画では2年目以降の計画であったが,予定をやや前倒ししている.
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