研究課題/領域番号 |
14J00107
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 昌樹 筑波大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 津波堆積物 / 海底活断層 / 別府湾 / 南海トラフ / 九州地方東部沿岸低地 / 珪藻分析 / 地球化学分析 / 放射性炭素年代測定 |
研究実績の概要 |
本年度は,過去に別府湾沿岸地域を襲った津波に焦点をあて,北岸と南岸に位置する沿岸低地において古津波堆積物調査を行った.得られた堆積物コア試料に対しては,堆積相観察と写真撮影に加えて,粒度分析,珪藻分析,地球化学分析,放射性炭素年代測定,火山灰測定を行った. 別府湾北岸に位置する速見郡日出町の沿岸低地では,全長約2 mの堆積物試料を合計10地点で採取した.多くのコアにおいて,深度1 m付近に最大層厚10 cm程度の砂層が連続的に観察された.この砂層は,上下の有機質泥層と明瞭な地層境界で区切られていることとマッドクラストを含むことから,突発的に堆積したイベント層であり,堆積時に地表の泥を巻き上げたことが推測される.また,上下の有機質泥層では淡水-汽水生種の珪藻のみが産出するのに対して,砂層からは特徴的に汽水-海水生種の珪藻が認められた.このことは,砂層を構成する粒子が,より高塩分環境から供給されたことを示唆している.津波堆積物の可能性が高いこの砂層は,放射性炭素年代測定の結果から約2000年前に形成されたと推定できた. 南岸に位置する大圓寺湿地では,3地点で機械式ボーリング掘削(最大深度8.8 m)と10地点で手掘式掘削(最大深度6.0 m)を行った.海岸線から約170 m地点で採取された全長8.8 mの堆積物コアからは,少なくとも5枚の砂層と2枚の火山灰層が確認された.北岸での研究と同様に,珪藻分析の結果から,砂層は津波により形成された可能性が高いことが明らかになった.それぞれのイベント砂層の形成年代は,約2800年前以降,約3400年前,約4300年前,約5100年前,約7300年前である. 本研究が完了すると,別府湾沿岸の陸域に形成された津波堆積物の堆積年代が特定でき,別府湾海底活断層の活動時期が正確に復元されると期待される.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初の予定通り,別府湾沿岸の2地域において野外調査を行った.得られた堆積物コア試料中には,過去の津波で形成された可能性が高いイベント層が含まれており,各種分析も順調に進行した.来年度は,当該研究の最終年度となるが,必要な堆積物コアはすでに採取できているため,野外調査はこれ以上必要ない.粒度分析,珪藻分析,地球化学分析,放射性炭素年代測定のデータをもう少し充実させることで,別府湾沿岸地域での古津波堆積物研究は完成すると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように,別府湾沿岸地域における野外調査はほとんど完了し,古津波堆積物層を認定するための各種分析も概ね順調に進んでいる.最終年度である来年度は,これまでに得られたデータをまとめ,投稿論文を執筆する予定である. また,別府湾沿岸地域には,1707年宝永地震など南海トラフで発生した地震による津波が襲来したという記録も残されている.本研究で発見された古津波堆積物が,別府湾海底活断層によるものか,あるいは南海トラフで発生した地震によるものかを数値計算による津波シミュレーションから検討する.数値シミュレーションに加えて,他の九州東部沿岸地域や高知県,和歌山県などで確認されている古津波堆積物層の形成年代との比較も行い,別府湾沿岸地域と九州東部沿岸地域の津波履歴を解明する.
|