研究課題/領域番号 |
14J00126
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
谷口 直樹 明治大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | Almost Gorenstein環 / 系列的Cohen-Macaulay加群 / Rees代数 |
研究実績の概要 |
平成26年度は主に下記2課題に着手した。 課題① 高次元almost Gorenstein環論の整備と展開 課題② Rees代数のsequentially Cohen-Macaulay性判定 1次元解析的不分岐なNoether局所環に対して,V. BarucciとR. Frobergが創始したalmost Gorenstein環論の背景には,Gorenstein環とは限らないCohen-Macaulay環をよりきめ細かく分類したいという強い願望があり,不変式論,代数幾何学,組み合わせ論など諸分野への波及効果が期待されている。課題①の目的はalmost Gorenstein環論の高次元化にある。得られた成果は既にJournal of Pure and Applied Algebraから発表されている。今後はRees代数及びアフィン半群環のalmost Gorenstein性解析に従事する計画である。 課題②の目的はRees代数のCohen-Macaulay性に関する後藤-下田の定理のsequentially Cohen-Macaulay性への拡張である。主結果は,イデアルに付随する加群のfiltrationに関するRees加群のsequentially Cohen-Macaulay性が随伴次数加群のsequentially Cohen-Macaulay性により特徴付けられることを示すものである。また,主結果の具体的な応用例の1つとしてStanley-Reisner環の極大イデアルに関するRees代数のsequentially Cohen-Macaulay性を組み合わせ論的な不等式の挙動により特徴付けられることも示した。得られた結果は2つの論文に纏め,それぞれ国際的な数学専門雑誌に投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定を大幅に前倒しして,平成26年度内にalmost Gorenstein環の概念を高次元の局所環・次数環にまで拡張することに成功した。得られた成果は既に論文に纏め,Journal of Pure and Applied Algebraから発表されている。高次元のalmost Gorenstein性を基礎環とその正準加群の差異によって特徴付けるというアイディアこそ,almost Gorenstein環論の本質である。現在は,Rees代数や随伴次数環などのblow-up代数,及びアフィン半群環のalmost Gorenstein性解析に従事している。 一方で,平成26年度はRees代数のsequentially Cohen-Macaulay性解析にも着手し,期待以上の成果を挙げることが出来たことも,現在までの達成度を「当初の計画以上に進展している」と判断した理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 主に高次元almost Gorenstein環の理論整備に従事する計画である。Almost Gorenstein環の重要な具体例としては,2次元有理特異点や一般次元の有限CM表現型Cohen-Macaulay局所環が挙げられるが,これらの事実はalmost Gorenstein環論が特異点論や環の表現論とも密接に関連していることを示唆するものである。私は,古典的な可換環論の枠組みに捉われることなく,不変式論や代数幾何学,組み合わせ論など関連分野の知識と技術を獲得しつつ,almost Gorenstein性との相互関係の解明に従事する。具体的には,これまで解析がやや手薄となっている各種blow-up代数やアフィン半群環のalmost Gorenstein性解析に取り組む。 並行して,Ulrichイデアルの理論構築にも取り組む計画である。Almost Gorenstein環の理論には,B. Ulrich教授が創始し,後藤四郎教授を中心に一般化されたUlrich加群とUlrichイデアル理論が不可分に関連している。2次元有理特異点上のUlrichイデアルの遍在性に関する深い理論が表現論の形で記述される一方で,1次元局所環に関するUlrichイデアルの考察はやや手薄であり,3次元以上の場合を含めて,課題として残されている。私は既に,予備的な研究を開始していて,成果も挙がりつつある。結果を精査しながら完成を目指す。
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