平成27年度は,almost Gorenstein環論のさらなる進化・発展を目指して,下記2課題に着手した。 課題① Rees代数のalmost Gorenstein性解析 課題② Almost Gorenstein環内におけるUlrich idealsの挙動解析 Rees代数のCohen-Macaulay性解析は,1979年の後藤四郎教授と下田保博教授の共同研究まで遡る。現在までに数多くの優れた研究者により理論の精密化が行われているが,中でもGorenstein Rees代数はかなり稀な存在であることが知られている。従って,Rees代数のalmost Gorenstein性解析はRees代数の環構造論としても新たな地平を開くと期待される。課題①は,後藤四郎教授,吉田健一教授,松岡直之専任講師との共同研究として実施され,得られた成果は2本の論文に纏められており,J. Algebra,J. Pure Appl. Algebraから発表されている。 Almost Gorenstein環の理論には,B. Ulrich教授が創始し,後藤四郎教授を中心に一般化されたUlrich加群とUlrich idealsの理論が不可分に関連している。既存の理論ではUlrich idealsの挙動を制御するためには,環のGorenstein性が不可欠であった。課題②はGorensteinとは限らないが,Gorenstein 環の次に優れた構造を持つalmost Gorenstein環内におけるUlrich idealsの挙動解析に挑戦するものである。課題②は,後藤四郎教授,高橋亮准教授との共同研究として実施され,得られた成果は論文に纏め,Proc. Amer. Math. Soc. から発表されている。
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